私は以前、会社員として働いていましたが、ドイツ移住を機にフリーランスのトラベルライター(旅行ライター)に転身しました。前職は旅行ともライターとも関係のない仕事だったので、劇的な変化です。
現在は「専業トラベルライター」として、「旅行に関するライティング」のみで生計を立てています。
「トラベルライター」という存在は知っていても、多くの人にとってトラベルライターは身近な存在ではなく「直接の友人・知人にトラベルライターがいる」という人は少数派でしょう。
「トラベルライターの仕事の魅力とは?」をお伝えするために、「フリーランスのトラベルライターとして働くメリット」をご紹介します。
好きな「旅」が仕事になる
当然といえば当然ですが、やはりトラベルライターというのは「旅好き」であるもの。大好きな旅が仕事になるなんて、夢がありますよね!
会社員時代の私は旅行とはまったく関係ない仕事をしていたものの、休暇のたびに海外旅行に出かけていました。しかし、休暇を使って旅をしていたころは、旅行は「消費」でした。
もちろん「経験」という観点から見れば「投資」にもなりえますが、旅行することによってお金が入ってくるわけではないので、収入と支出という観点から見れば完全に消費です。平たくいうと、「旅をすればお金が減る一方」ということですね。
トラベルライターになった今でも、旅をすればお金は減るのですが、旅は「取材」であり、のちの収入を生み出す源泉。旅をすればするほど稼ぐための素材(体験や知見)が手に入ります。旅をすればするほどお金が減っていた会社員時代との違いは大きいです。
しかも、トラベルライターの仕事の魅力は「旅することが収入につながる」ことだけではありません。自分が書いた旅行コンテンツによって、読者が「ここに行ってみたい!」と感じて、実際に行って素敵な経験を得たり、実際には行かなくても旅したようなワクワク感を味わったりといった波及効果が生まれます。
そのぶん責任を伴うのも事実ではありますが、書くことが好きで「旅の魅力を多くの人に伝えたい」と思っている人にとっては、とてもやりがいのある仕事です。
いつでもどこでも仕事ができる
トラベルライターに限った話ではなく、フリーライターなどパソコン一台で自由に働ける仕事全般にいえることですが、パソコン1台とネット環境さえあれば、いつでもどこでも仕事ができます。
外がすごく寒かろうが、雨が降っていようが、通勤する必要がないので、外に出たくないような日には「在宅で仕事ができてラッキー」と思いますね。通勤に時間やエネルギーを取られないのもありがたいです。
もちろん、旅行中も旅の合間に仕事ができちゃいます。特に一人旅をしていると中途半端な空き時間ができることも多いので、そういった時間を有効活用できるのは嬉しいものです。
自分でスケジュールを決められる
これは誰でもイメージしやすいと思いますが、フリーランスとして自宅で仕事ができるので、出勤日数・曜日自由、就業時間・休憩時間自由、と普通の会社員ならちょっと考えられないほど色々なことが自分の裁量で決められます。
トルコで出会って仲良くなったパキスタン生まれ、アメリカ在住の友人がいるのですが、今年(2016年)の6月に「2週間後に家族でパリに行く」との連絡がありました。私は即座に「じゃあ私も行く!」と言って、パリで再会を果たしたのです。
会社員をしていると、病気などのっぴきならない事情は別として、急に2週間後にまとまった休暇なんてなかなか取れないですよね。
一日のスケジュールから、旅行の日数や時期まで、自分の裁量一つでほとんどすべて決められるのは、生まれてこのかた今が初めてです(笑)
海外でも就労ビザなしで働ける
普通海外で働くとなると、現地で就労ビザ(労働許可)を取得する必要がありますが、日本から仕事を受注しているのであれば、現地での就労ビザは必要ありません。滞在許可だけでオッケーです。
私自身、ドイツに移住したものの、結婚手続きに時間がかかって新たなビザが取得できず、しばらくドイツ(正確にはシェンゲン加盟国)を離れなければならないという事態になって、そのありがたみを痛感しています。
ドイツを離れてシンガポールとマレーシアに1ヵ月半滞在、これからは4月半ばまで日本に滞在する予定ですが、フリーライターだからこそ、シンガポール・マレーシア滞在中もこれまで通りに仕事ができましたし、日本でも仕事ができます。
生活拠点がしばしば変わる場合、「仕事が持ち運べる」というメリットは大きいですね。
旅に厚みが出る
趣味の旅行とは違って、トラベルライターの旅は、旅行が終わってそれで終了ではありません。旅行はいってみれば食材の買い出しのようなもので、旅行の後は、その食材を使って料理する(記事を執筆する)という仕事が待っています。
当然のことながら、トラベルライターとして活動する以上は、書いた記事に対して報酬(原稿料)が発生します。
お金をもらってメディアに掲載してもらえるような記事にするためには、「きれいだった」とか「楽しかった」といった個人的な感想では不十分。その国や場所の歴史的背景なども知って、語れるようになる必要があります。
そのため、トラベルライターとして旅行をすると、単に観光旅行をしていたころに比べ、訪れる場所の歴史や特色などさまざまな情報を知ろうとするようになり、旅に厚みが出てきます。
観光局のスタッフやホテルの支配人、シェフなど、観光業に携わる方に取材をさせていただくこともあるため、「旅」に関わる仕事をしている人々の「想い」をじかに感じることができるのもトラベルライターの魅力です。
アウトプットがすべて自分の評価や利益につながる
会社員の場合、自分のアウトプット(成果)が自分だけの評価ではなく、部門や会社全体の評価になることがあります。さらには、仕事の内容によってはアウトプットの評価基準自体がはっきりしないこともあります。
ですが、フリ―ランスのトラベルライターの場合、基本的には努力や成果がダイレクトに自分に返ってきます。
トラベルライターの「アウトプット(成果)」とは、記事の質や本数。書いた記事は実績として自分の資産になりますし、実績が認められれば収入も増えていきます。
経験年数だけで自動的に原稿料が上がっていくような甘い世界ではありませんが、実力や努力で評価されるフィールドであるといえます。
タダで旅行ができる場合がある
これはまさにトラベルライターならではの特権といえますが、トラベルライターになるとタダで旅行ができる場合があります。
トラベルライターの旅行費用を負担してくれる先としては、メディア(旅行サイトなど)や観光局、ホテルなどがあります。
メディアが旅行費用を負担してくれる場合は、「そのメディアでその取材に基づいた記事を書く」ことが条件。ただし、旅行費用は一切出してくれないメディアも多いですし、タイアップ案件(PR記事)のときだけ取材費が出るというメディアもあります。
観光局やホテルの中には定期的に「プレスツアー」を開催しているところがあり、参加費は無料がほとんど。プレスツアーに参加すれば、交通費・宿泊費・食費など、すべてがタダになるのです(条件によっては自己負担が発生する場合もあります)。
また、プレスツアーほど大規模なものでなくても、「宿泊取材」という名目でホテルが個別にトラベルライターを招待してくれることもあります。その場合、宿泊費は無料が基本で往復の交通費も出る場合が多いです。
プレスツアーにしても、体験取材にしても、参加するにはトラベルライター自身が寄稿できるメディアを持っていることが前提。トラベルライターになったからといって、すぐにタダ旅行の恩恵にあずかれるとは限りませんが、実績を積んでいけばお声がかかる可能性も高くなっていきます。
実際に、私も何度かプレスツアーや宿泊取材に参加させていただいたことがあります。タダで旅行ができるというのはもちろん嬉しいですが、国内外のトラベルライターやジャーナリスト、観光局スタッフとの交流など、「人」と接した思い出はそれ以上の価値があると感じています。
おわりに
今回は「フリーのトラベルライターのメリット」がテーマなので、いいことばかりを書きました。いいことばかりを挙げると、すごく楽で魅力的な仕事のように聞こえるかもしれませんが、甘くない現実があるのも事実。
「ここは会社員時代のほうがよかったなぁ」なんて思うこともやっぱりあって、「会社員よりフリーランスのほうが優れている」などと言うつもりはまったくありません。