トラベルライターの経費(お金)の話!旅行ライターってタダで旅行できるの?

国内外のあちこちを旅して記事を書く「トラベルライター(旅行ライター)」。「旅を仕事にする」という点で憧れる人も多いですが、その実態はあまりよく知られていないのが実情です。

「トラベルライター(旅行ライター)になりたい」と考える人なら必ず知っておきたいのが、トラベルライターの“お金”の話。トラベルライターとして活動するには国内外のあちこちを旅する必要があるため、相当なお金(経費)がかかります。

ところが、「トラベルライター 経費」といったワードで検索しても、トラベルライターの経費事情について具体的に踏み込んで紹介している記事はあまりなく、実際にトラベルライターとしての活動経験がある人から見ると、現実と乖離している内容が出てくることも珍しくありません。

むしろ、トラベルライターのメリットを過剰に煽って、自分のサービス(トラベルライター養成講座等)に申し込ませようとするようなミスリーディングな記事すらあるので要注意です。

そこで、ここでは実際にトラベルライターとして活動してきた自身の経験をもとに、「トラベルライターのリアルな経費事情」についてお話します。

トラベルライターってタダで旅行できるの?

トラベルライターとして活動するメリットとしてよく挙げられることのひとつが、「タダで旅行ができる」ということです。

私自身、「経費ってどっかから出るの?それとも自腹なの?」と聞かれることがよくあり、関心の高さを実感しているところです。

実際のところ、トラベルライターになると本当にタダで旅行ができるのか?最初にその質問にズバリお答えすると「イエス」です。

ところが、この「イエス」はあくまでも「タダで旅行ができるチャンスがある」という意味であり、すべてのトラベルライターがタダ旅行の恩恵にあずかっているというわけではありません。また、運良くタダ旅行の機会が得られているトラベルライターであっても、すべての旅行がタダとは限りません

私自身のケースを振り返ってみると、トラベルライターになってからの旅行のうち、100%プライベート(夫婦旅行など)と位置づけたものを除くと、70%くらいはクライアント等から経費が出ていた(=タダ旅行だった)と思います。

ただ、紙媒体に比べ、オンラインの旅行コンテンツの制作にかける予算は少ないため、Web全盛のいま、旅費を出してくれるクライアントはむしろ少数派になってきています

また、フリーランスのトラベルライターは仕事とプライベートの区別があいまいな部分も多く、「自費で旅行をして、書けそうなネタがあったら書く」といったケースもあるため、残りの30%程度は自費で旅行をしてきました。

100%自費で旅行しているトラベルライターも多い

私の場合、トラベルライターになってからの旅行のうち70%程度がクライアントから経費が出ていますが、この数字はおそらくWebを中心に活動しているトラベルライターとしては多いほうだと思います。

トラベルライターの中には、100%自費で旅行をしているという人も珍しくありません。特に、専業トラベルライターではなく、他ジャンルのライティングや編集などの仕事の傍らトラベルライターもやっている人や、会社員をしながら副業としてトラベルライターをしているような人はその傾向が顕著です。

基本的に、オンラインの旅行メディアは取材経費が出ないことがほとんどなので、Webを中心に活動していると、トラベルライターといえど旅費を自己負担せざるを得ないケースも非常に多いのです

しかも、少なくともWebに関していえば、旅行メディアの報酬(原稿料)は非常に安いことが多く、「1記事2,000文字以上で1本5,000円」みたいな案件もザラにあります

自腹で旅行して、写真を撮って、執筆して、入稿して1本5,000円…トラベルライターとしての活動経験がない人でも、この報酬体系がいかに厳しいかがわかるでしょう。こういった報酬体系の場合、記事を書いて得られる原稿料よりも、取材旅行にかかる経費のほうが大きいため、単純に差し引きするとマイナスになってしまうことも多いのが実態です。

トラベルライターがタダで旅行できるパターン

のっけからトラベルライターの厳しい現実を突きつける形になってしまいましたが、取材旅行の費用をクライアントに負担してもらうことができれば、タダで旅行することができます。もちろん記事を書くことが前提にはなりますが、「タダで旅行ができる」というのは旅好きにとってちょっとした憧れではないでしょうか。

Webを中心に活動しているトラベルライター全体の傾向を踏まえると、旅行経費の70%程度をクライアントに負担してもらってきた私はかなりラッキーなほうだといえると思います。

では、具体的にトラベルライターがタダで旅行できる(=クライアントから旅費が出る)のはどのようなパターンなのでしょうか。トラベルライターが自腹を切らずに旅ができるパターンとして、おもに次の3つが挙げられます。

① メディアの編集部が負担する

ひとつめは、執筆しているメディアの編集部が取材費を負担してくれるというパターンです。

ただし、前述の通り、Webメディアの場合、編集部が取材費を負担してくれるケースはそれほど多くはありません。経費が出る場合でも「上限5,000円」など、ちょっとした「補助」レベルということも多いですし、「PR記事(広告記事)は経費が出るけど、通常記事は経費が出ない」というメディアもあります。

ネット全盛の時代、最も身近な旅行コンテンツといえばオンラインの旅行サイトですが、オンラインの旅行記事のほとんどは、ライターが自腹を切って取材していると思っていただいていいでしょう。

「○○のおすすめ観光スポット○選」のような、いわゆる「まとめ記事」の場合は、そもそも取材自体が行われていないことも多いです。

② 観光局や自治体、ホテル等が負担する

旅行・観光業界では、政府系観光局や自治体、ホテル等の旅行関連施設がPRを目的として、メディア関係者やインフルエンサーを招待するという取り組みが行われています。もちろん、トラベルライターも寄稿しているメディアで記事を書くことを前提に「メディア関係者」として招待されることがあります

例えば、「特定のホテルに泊まって体験記を書く」「特定の国や自治体に行って、その魅力を紹介する記事を書く」などですね。こういった場合、基本的に取材費は観光局や自治体などの負担になることが多いです。ホテルの場合は「宿泊費や食事代など滞在中の費用が無料になる」という形になるのが一般的です。

➂プレスツアーに参加する

上記の②と非常に近しい形ではありますが、トラベルライターになると、観光局や自治体、ホテル、航空会社などが主催する「プレスツアー(ファムトリップ)」に参加できることもあります

プレスツアーも②と同様、メディア関係者やインフルエンサーを招待することで、国や都市、施設に関する情報のメディア露出を増やすことが目的です。なので、基本的にプレスツアーの参加費は無料。

一部自己負担ありのプレスツアーもありますが、海外に行く場合でも、往復の航空券や宿泊費、ツアープログラムに含まれる食事にかかる費用や観光にかかる費用もすべて無料ということが多いです。

ただ、当然のことながらプレスツアーには多額の費用がかかるため、参加できる人数には限りがあります。世の中のトラベルライターは、ほかの仕事やほかのジャンルのライティングとの兼業で、トラベルライター1本ではない人が多いということもあり、トラベルライターとして活動してはいるものの、「プレスツアーなんて参加したことがない」という人も多いはずです。

プレスツアーって何?どんなことするの?

なかなか一般の人には知る機会がなく、秘密のベールに包まれているのが「プレスツアー」。「プレスツアーってどんなことするの?」と気になる人も多いと思うので、実際にプレスツアーに参加した経験をもとに、ちょっとだけ実態をお話します。

海外の政府系観光局が主催の場合、1週間ほどかけてその国の主要観光地をいくつか周ることが多いです。ツアーのように貸し切りバスで周ることもあれば、公共交通機関で周ることも。

基本的に1週間なら1週間、がっつり観光プログラムが組まれていて、行く先々でガイドさんの説明を聞きながら、色々な観光地を周ったり、ローカルグルメを楽しんだりします。

ファムトリップの場合、メディア関係者だけでなく、旅行会社関係者が参加していることもあります。複数のプレスツアーに参加してきた経験からいうと、プレスツアーの一番の魅力は「旅行や観光に携わっている人たちと一緒に旅する独特の一体感」だと思います。

夫婦や仲の良い友達との旅行ももちろん楽しいですが、「仕事」として参加する旅は気楽ではないぶん、不思議な高揚感があるんですよね。ほかのライターさんや旅行業界の関係者とつながれるのもプレスツアーの大きな魅力です。

さらに、ガイドさんの説明を聞きながら観光するので、個人で旅するよりも「学び」の要素が大きいというのもプレスツアーに参加するメリットです。

※一口に「プレスツアー」といっても行き先や日数、プログラムの内容は千差万別。上記で挙げたもの以外にも、ホテル主催で、その系列ホテルに泊まりながら観光するものなど、色んなパターンがあります。

トラベルライターは経費比率が高い仕事

具体的な例を交えて、トラベルライターになるとタダで旅行ができる機会があることをお話してきました。

ただ、冒頭でお伝えした通り、現実にはクライアントから経費が出ないことが多いのがトラベルライターの実態です。実際に、ほかのトラベルライターさんから取材旅行の経費が出たことなんてほとんどないと聞いたこともあります。

「トラベルライターになるとタダで旅行ができる」と思ってしまうと、いざトラベルライターとして活動を始めてみたら、厳しい現実に打ちのめされる人もいるかもしれません。

当然、取材旅行の費用は確定申告のときに「経費」として計上することができますが、あくまでも自分が払う税金が安くなるだけであって、会社員の経費のように自分以外の“誰か”が払ってくれるというわけではありません

そのため、よほど恵まれたトラベルライターを除き、トラベルライターは非常に経費のかかる、経費比率の大きい仕事です。

経費比率が大きいと確定申告をしたときの「所得(売上から経費や各種控除を差し引いた金額)」が極端に少なくなるため、所得税や国民健康保険料が安くなるというメリットがあります。一方で、それは手元に残るお金(売上-経費)が少ないことを意味しているので、「稼ぎ」という意味ではなかなか厳しいのは否めません……。

おわりに

「旅が仕事になる」「世界中どこでも働ける」と、一部で自由でキラキラしたイメージが先行しているトラベルライターですが、トラベルライターの経費事情は生易しいものではありません。

専業トラベルライターとして約4年間活動した後、現在はフリーランスライターとして旅行以外にもさまざまなジャンルのライティングを手がけている私としては、ほかのジャンルで生活費を稼ぎつつ、スパイス程度に旅行記事も書くというのがちょうどいいバランスかなと感じています。