突然ですが、あなたは自分の時間単価(時給)を計算したことがありますか?
フリーランスは「所定労働時間」や「定時」という概念がないので、必然的に自分の時間単価(時給)や時間効率を意識するようになりますが、私自身、会社員時代は自分の時間単価(時給)を意識したことはほとんどありませんでした。
今回は、「会社員の時間単価(時給)を計算してみたら…」というお話です。
自分の「時間単価(時給)」を計算したこと、ありますか?
2021年1月からまたフリーランスに戻り、自分で働く日や労働時間を決められるようになったので、常に自分の時間単価(時給)や時間効率を意識するようになりました。
でも、世間一般、特に会社員の方で自分の「時間単価(時給)」を計算したことがある方は少数派だと思います。実際、私自身も会社員だった頃は自分の「時間単価(時給)」を計算したこともなければ、「自分の時間単価(時給)を計算してみよう」などと思ったこともありません。
それは、日本には起業家やフリーランスが少なく、労働日数や労働時間を自分でコントロールできない会社員が主流のため、「時間単価(時給)」ではなく「年収」が注目されることが多いからでしょう。
もちろん「年収」も重要な指標ではありますが、自分が生み出している価値を正確に測るためには「年収」よりも「時間単価(時給)」のほうが有効です。
「時間単価(時給)」を意識することで、目先の「年収」の数字に引きずられることなく、その仕事の待遇を冷静に判断することもできるようになるでしょう。
会社員の「時間単価(時給)」を計算してみた
前置きはこのくらいにして、実際に会社員の「時間単価(時給)」を計算してみましょう。
なお、年間労働日数は「230日」で統一しています。
<算出ロジック>
(土日祝および土日祝以外に会社から与えらえる年末年始休暇・夏季休暇を除いた年間労働日数:240日)-(有給休暇取得日数:10日)=230日
※会社が与える休暇が多い場合、有給休暇を11日以上取得している場合、休日出勤をしている場合など、実際には年間労働日数が230日より多い場合もあれば少ない場合もあります。
さて、ここから実際に会社員の「時間単価(時給)」を見ていきましょう。
平均年収と同じ年収430万円の人
日本の給与所得者の平均年収が約430万円ですので、まずはそれと同等の年収430万円の人の場合を見てみましょう。
- 1日8時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業0時間)
4300000÷(230×8)=2337円
- 1日10時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業2時間)
4300000÷(230×10)=1870円
年収中央値の年収370万円の人
さきほど「日本の平均年収は約430万円」と言いましたが、年収が高い一部の人が平均値を引き上げているので、「平均年収は実態を正確に表していない」とも言われます。
「年収中央値」というのは、年収が低い順から高い順(または高い順から低い順)に並べたときに、ちょうど真ん中に来る人の年収のことです。
日本の年収中央値は約370万円と言われ、平均年収よりも低くなっています。
- 1日8時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業0時間)
3700000÷(230×8)=2011円
- 1日10時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業2時間)
3700000÷(230×10)=1609円
ここからは、年収500万円から100万円ごとに見ていきます。
年収500万円の人
1日8時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業0時間)
5000000÷(230×8)=2717円
1日10時間働いた場合の時給(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業2時間)
5000000÷(230×10)=2173円
年収600万円の人
- 1日8時間働いた場合(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業0時間)
6000000÷(230×8)=3261円
- 1日10時間働いた場合(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業2時間)
600000÷(230×10)=2609円
年収700万円の人
- 1日8時間働いた場合(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業0時間)
7000000÷(230×8)=3804円
- 1日10時間働いた場合(1日あたりの所定労働時間が8時間+残業2時間)
7000000÷(230×10)=3043円
※いずれのケースでも、会社が負担している社会保険料等は考慮していません。
また、「年収」には表れない会社員ならではの恩恵がある場合もあります。会社に寮や社宅があって格安で住めている場合は、浮いた金額分を年収にプラスするとより正確な「時間単価(時給)」を算出することができます。(普通に借りれば月額10万円の物件に2万円で住めている場合、浮いた8万円×12カ月分=96万円を年収に加算)
どうでしょう、ご自身の労働条件に近いものはありましたか?
実際には上記のモデルケースより1日あたりの労働時間が多い場合も少ない場合もあります。ただ、共通して言えるのは、残業の多寡が「時間単価(時給)」にかなり影響するということですね。
1日10時間働いて年収430万円を得ている人よりも、1日8時間働いて年収370万円を得ている人のほうが「時間単価(時給)」は高いのです。
どちらが良いと思うかは個人の価値観次第ですが、「年収」ばかりに目がいって「時間単価(時給)」を意識していないと、こういう逆転現象にも気づかないまま働き続けてしまうこともあるかもしれません。
会社員時代の「時間単価(時給)」を計算してみた
ここで、私自身の会社員時代の「時間単価(時給)」もご紹介します。
会社員時代の2020年の年収をベースに「時間単価(時給)」を計算してみたところ、「2636円」という結果になりました。
「2636円」という金額を高いと思うか安いと思うかは人によって違うでしょうが、この金額を目にしたとき、「思ったより安い…」と感じたのが正直なところです。
私は「自由でいられること」を重視するので、「自由を投げうって、さまざまなプレッシャーやルールを受け入れながら、平日の起きている時間のほとんどを会社に捧げた結果が2636円か…」と思ってしまったのです。
通勤にかかる時間も「拘束時間」と考え、通勤時間も労働時間とみなして計算すると、私の会社員時代の「時間単価(時給)」はさらに下がり、「2180円」でした。
私のように、自分の「時間単価(時給)」を計算してみると、「意外と安いな…」と感じる会社員の方は少なくないと思います。
フリーランスになった今の「時間単価(時給)」は?
私の場合、通勤時間を考慮しない会社員時代の「時間単価(時給)」は2636円でした。それがフリーランスになった今、どのように変化しているのでしょうか。
フリーランスの今は、タイムカードもなければ1日あたりの労働時間を計っているわけでもないので、会社員時代と違って正確な労働時間を把握することができません。
そのため、収入から労働時間を割り戻すのではなく、案件あたりの報酬をベースに、「その案件をこなすのにどのくらいの時間がかかるか」をベースに考えることになるので、会社員の「時間単価(時給)」とは算出方法が異なるうえ、かなりざっくりしたものになることをおことわりしておきましょう。
私が現在フリーランスとして受けている案件を時給換算すると、「時間単価(時給)」は約4000円~12000円くらいになります。これは案件によって異なりますし、同じクライアントの案件でもそのときによって作業の所要時間は変わってくるので厳密な数字ではありません。
とはいえ、ものすごく乱暴に丸めると、フリーランスになった今の「時間単価(時給)」は5000円以上あると考えられます。
会社員時代の「時間単価(時給)」が2636円だったので、フリーランスになって「時間単価(時給)」が約2倍になったことになります。フリーランスの今は通勤がなくなったので、それも考慮すると2倍以上ですね。
もちろん、会社員時代は会社が社会保険料を半額負担してくれていましたし、年収には表れないメリットもありましたが、それがなくなっても十分に余りある効率アップです。
「時間単価(時給)」を上げる努力をすることで市場価値が上がる
わざわざ自分の話をしているのは、自慢したいからでも「会社員よりフリーランスがいいよ」と言いたいからでもありません。
「うまくやればフリーランスは会社員よりも効率よく稼げることを知ってほしい」「それによって自由に働ける人が増えたらいいな~」という気持ちはありますが、会社員に向いていない人がいるように、フリーランスにも向き不向きがあります。だから、一概に「フリーランスはいいよ~」というつもりはありません。
ひとつ言えるのは、世の中には色んな働き方があることを前提に「自分の時間単価(時給)を上げるにはどうしたらいいだろう?」と考えることが、ビジネスパーソンとしての市場価値を高めることにつながるということです。
また、自分の「時間単価(時給)」を知ることは、仕事内容と待遇が見合っているのかを冷静に判断する材料にもなります。
「年収」だけを見て「待遇が上がるぞ~!」と喜び勇んで転職したら、「年収は上がったけど、残業も思いっきり増えてお金を遣う時間すらない…」という状況では本末転倒。
「年収」だけを見ていると、時に本質を見誤ります。本来は、「年収」よりも「時間単価(時給)」の方が、仕事の待遇をよりフェアに評価できる指標なのです。
実際に計算してみて、「自分の時間単価(時給)が低い!」と感じた方もいるかもしれません。そう思ったら、今の会社で出世して給与を上げる、転職する、独立するなど、色んな選択肢がありますし、年収だけでなく「時間単価(時給)」を上げようと努力することがスキルアップにつながり、結果的に市場価値も上がるはずです。
日本はまだまだ「年収」で語る文化が根強いですが、今後は「年収」の数字だけに惑わされることなく、「時間単価(時給)」も意識しながら、自律的にキャリアを築いていく人が増えるといいなと思っています。