前回、4年近く続けたフリーランスのトラベルライターを卒業し、正社員として就職するという報告をさせていただきました。
今回は、「なぜトラベルライターを辞めようと思ったのか」、そこのところをより詳しくお伝えしたいと思います。
おかげさまで、以前執筆した記事「旅を仕事に!現役トラベルライターが教える、旅行ライターになる方法」は、たくさんの方々に読んでいただきました。だからこそ、なぜ辞めるのかを伝える責任があると考えています。
旅を仕事にするのは幸せなことではありますが、楽な道ではないのも事実。これからとラベルライターになりたいと思っている方は、私の経験を参考にしていただけたら嬉しいです。
もっと地に足のついた生活がしたい
トラベルライターという仕事は、まともにやれば国内外をしょっちゅう飛び回る仕事。私の場合、海外が中心だったので、月のうち1~2週間しか家にいないというのもザラでした。
価値観やライフスタイルにもよりますが、私にとってトラベルライターとしての生活は、持続可能なものではありません。そもそも、女性の場合は妊娠した時点でアウト。また本格的に取材活動が再開できるのは、かなり先になるでしょう。
しょっちゅう旅に出ていると、パートナーと過ごす時間が減るのも問題ですね。ドイツ人のダーリンには、「今だけだから」と言って、私がしょっちゅう旅行でいなくなることを納得してもらっていました。
昨年7月に日本に帰国して、今年3月には定住先も決定。このタイミングで、子どもができでも続けられる、「地に足のついた生活がしたい」と思うようになりました。
体力的・精神的な負担を感じる
私の場合、取材先が海外中心だったので余計ですが、頻繁に海外旅行を繰り返すというのは、体力的にも精神的にも負担がかかります。
ヨーロッパなどの遠方であれば、長時間フライトに加えて時差もあり、身体のリズムが狂うのは必至。遠方でなくても、普段と違う環境にいるわけですから、精神的なストレスは避けられません。いくら旅行が好きでも、海外慣れしていても、母国でない国にいるというのは、無意識のうちに精神的な負荷がかかってくるもの。
「このまま今の生活を続けたら、身体を壊すんじゃないか」。そんな気がしていました。
以前ほど旅行を純粋に楽しめなくなった
大学卒業前に旅に目覚めて以来、海外旅行は私にとって一番の楽しみ。以前会社員として働いていたときも、休暇のたびに海外に行っていました。
けれど、いざ旅を仕事にしてみると・・・
最初は旅行記事を書いてお金をもらえるだけで幸せでしたし、クライアント負担(つまりタダ)で旅行に行ける機会もたびたびあって、「最高!」という心境でした。
しかし、続けているうちに、「あれ、私前ほど旅を楽しめてなくない!?」と気づいてしまったのです。旅行中も、「記事のネタになるかどうか」ばかり考えてしまいますし、以前ほど損得勘定抜きで、自分が楽しむことにフォーカスできないんですよね。
新たな旅行を計画しているときも、自分が本当にその場所に行きたいのか、それとも「どこかに旅に出ないといけない」という強迫観念からなのか、よくわからなくなったり・・・
「旅が仕事になったら、以前ほど旅が楽しめなくなった」は、トラベルライターあるあるなのですが、それって本当にもったいないことですよね。正社員就職したら、旅行は純粋な趣味として楽しみたいと思います。
一番好きなことを仕事にする必要はないと気づいた
旅を仕事にして、以前ほど旅が楽しめなくなったことに気づいてから、「(趣味として)自分が一番好きなことを仕事にする必要はないのではないか」と感じるようになりました。
その人の性格や価値観にもよるので、一概には言えませんが、趣味として一番好きなことではなく、仕事として好きなこと、チャレンジしてみたいこと、得意なことをすればいいのではないかと思うのです。
私が仕事として好きなことは、文章を書くこと、(取材などで)人の話を聞くこと、人にアドバイスをすること等々。文章以外は、対面コミュニケーションが軸になっています。だから今回、それらが生かせる仕事に転職することにしました。
人との関わりのなかで成長したい
フリーランスのトラベルライターとして活動するなかで、「どこにも属していない宙ぶらりん感」を覚えることがよくありました。
「一匹狼的な働き方が向いている」という人もいるでしょうし、私としても自分の時間を自分でコントロールでき、小さくても一国一城の主になれる点はとても魅力的でした。
しかし、フリーランスのトラベルライターを続けるにつれて、「仕事仲間や上司が欲しい」という思いが強くなっていったのです。フリーライターといっても人によって色々ですが、私の場合クライアントとのやり取りはメールが中心で、直接会う機会は少なく、もちろん同僚や上司もいません。
「人との関わりのなかで成長したい」という気持ちが強まって、もう一度会社という組織で働きたいと思うようになりました。
収入を上げたい
今この瞬間の私は、専業トラベルライター。旅行記事の執筆とそれに関連する仕事のみで生活を賄っています。ライターとして活動している方はたくさんいても、旅行分野のみに特化していて、かつそれで食べていけるだけの収入がある人というのはおそらくレアです。
経験なし・コネなしからライター業に挑戦し、ここまでこれたのは本当に幸運でしたが、今後はもっと収入を上げていきたいというビジョンがあります。しかし、今のままではなかなか難しい。
そもそもフリーライターの平均年収は、259万円。(出典:はたらいく)この数字は低すぎるような気もしますが、正社員と同等かそれ以上に稼ぐのは難しいことは容易に想像がつきますよね。
事実、私が以前正社員総合職として働いていた企業にそのまま勤めていれば、今よりずっと稼げているはずです。次の項目にも関連してきますが、正社員として働いてスキル・経験を伸ばし、収入も上げたいと思いました。
スキル・経験を伸ばしたい
今回正社員として就職する一番の決め手になったのが、「自分のスキルと経験を伸ばしたい」という思いです。自分のスケジュールを自分でコントロールできるフリーランスには魅力を感じていましたが、「自分には、このままずっとフリーランスとして戦い続けられる武器あるのか?」と自問したときの答えが「NO」だったのです。
フリーランスになるにあたっては、一旦企業に就職してから独立に必要な人脈やスキルを蓄えてフリーランスになるというパターンが正攻法ですが、成り行きでフリーランスになった私は準備らしい準備はほとんどしていませんし、前職とトラベルライターにはほとんど関連性がありません。
人生何があるかわからないので、将来的に私がフリーランスに戻る可能性はゼロではありません。しかし、いずれにせよ今のままではスキルと経験が足りない!そう気づいたときに、正社員として就職する決心がつきました。上司や先輩から学びながら給与も得られるというのは、フリーランスにはない正社員の特権です。
トラベルライターとして全うした感がある
トラベルライターになる前の渡航歴も合わせて、これまでに60ヵ国を訪れ、軽く1000本を超える旅行記事を書いてきました。
海外のプレスツアーや旅行イベントなどにも招待していただき、トラベルライターとしての経験をある程度カバーしてきたと感じています。死ぬまでに行っておきたい国のほとんどに行くことができましたし、わが旅人生に悔いはありません。
もちろん、どんな仕事であれ「これで完璧」「もう学ぶことはない」という状況はありえないと思っていますが、このままトラベルライターとしての活動を続けるよりも、次の舞台で新しいことにチャレンジしたほうが、自己成長につながるし、刺激も多いと思うのです。
「まだまだトラベルライターとして思い残したことがある!」という状況だったら違っていたかもしれせんが、私のなかでトラベルライターとしてのキャリアを全うできた感覚があるので、今が「次に行くとき」なのだと思っています。
人生は自分でデザインできる
一時ドイツに住むことになって、「書くことが好き」「旅が好き」「今のうちに思う存分旅がしたい」という思いから始まった、フリーランスのトラベルライターとしてのキャリア。
4年前に戻れたとしても私は同じ道を選びますし、トラベルライターとしての経験は、人生の財産です。
今強く思うことは、「人生は自分でデザインできる」ということ。就活生だったときは「大手企業で正社員として働きたい」と思ったからそうなったし、4年前に「書くことを仕事にしたい」と思ったからそうなった。そして今、「成長できる環境で新しい仕事にチャレンジしたい」と思ったから、そうなっています。
大切なのは、「正社員」や「フリーランス」といった身分ではなくて、「その状態を自分で選んでいる」という感覚があること。自分の人生を自分で決めているという感覚があれば、きっと目指した通りに一歩ずつ前に進んでいけるはずです。
私は新卒で会社員として6年働き、その後フリーのトラベルライターとして4年間活動。その後さらに会社員として1年間働き、2021年1月に再びフリーランスに戻りました。再びフリーランスに戻ってから、会社員時代と比べると、さまざまな変化があ[…]