ミュンヘン銃乱射事件、ヨーロッパで相次ぐテロは「文明の衝突」?

こんにちは、はるぼぼ(@harubobo_nikki)です。

昨日(2016年7月22日)、ドイツ南部の都市ミュンヘンで銃乱射事件がありました。ニース、ミュンヘン…なぜ私が旅行を予定している場所で凶行が相次ぐのかと思ってしまいます。

ミュンヘン銃乱射事件の概要

ドイツ第3の都市・南部ミュンヘンの大規模商業施設で22日午後6時(日本時間23日午前1時)前、男が銃を乱射し、9人が死亡し、子供を含む16人が負傷した。うち3人が重傷。地元警察は23日、容疑者はイラン系の男(18)で、単独犯とみられると明らかにした。現場近くで遺体が見つかっており、男が自殺したものとみている。動機は分かっていないが、警察は「重大なテロの事態だ」と強調。背後関係の解明に全力を挙げる。(時事ドットコムより引用)

容疑者について詳しいことはまだわかっていませんが、2年以上前からミュンヘンに住んでいるイランとドイツの二重国籍者とのことです。

いつ起こってもおかしくなかったドイツでのテロ

私がこの事件を知ったのは、事件発生からまもなくのことでした。というのも、ドイツや近隣国で重大な事件などが起これば在ミュンヘン総領事館からメールが届くようになっているのです。

この事件に関する第一報のメールを見ても、それほど驚くことはありませんでした。「ドイツでもそのうちテロが起こる」と思っていたからです。これまでにテロが起きている隣国のフランスやベルギーと陸続きで、ドイツだけがテロと無縁でいられるはずがありません。

ドイツはこれまでに大量のイスラム系移民や難民を受け入れています。2015年だけでも100万人という規模の難民を受け入れており、そのほとんどがイスラム教徒。

「イスラム教徒=テロリスト」ではありませんが、そもそもテロを起こす目的で難民に紛れて入ってくる人がいてもまったくおかしくないのです。

私が住んでいるのは小さな地方都市なので自分の生活圏でテロが起こる心配はしていませんが、ベルリンやミュンヘン、ハンブルクといった大都市ではいつ起こってもおかしくないと思っていました。

実際に、これまでもテロ未遂容疑で犯人が逮捕されたというニュースを何度も見聞きしています。私はまめにニュースをチェックしていたほうではないので、私が把握していないケースもおそらくあるでしょう。むしろこれまでテロを防ぐことができていたのがすごいといえるのではないでしょうか。

(2016年7月24日追記:その後容疑者とイスラム過激派との関係を示す証拠はなく、イスラム過激派によるテロとの見方は否定されました。とはいえ、この事件が一種の無差別テロの性格を帯びていることに変わりはないと思います。)

ミュンヘン銃乱射事件に対する人々の反応

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この銃乱射事件が明るみに出ると、Twitterで「Munich(ミュンヘン)」がホットな話題になりました。日本では深夜の時間帯だったためそのほとんどが英語のツイートでした。

犯人がまだ逃走中だったため、「みんな無事で」とミュンヘン市民の無事を願うツイート、「お願いだからもうやめて」「この世界はどうなってるんだ」「どうして人間は手と手を取り合って共存できないんだ」といった、テロが各地で相次いでいる状況にに対する衝撃と悲しみを表すツイートなどがありました。

その一方で、犯人が特定されていないにもかかわらず「難民を受け入れることは潜在的なテロリストを受け入れることだ」「ヨーロッパにイスラム教徒はもういらない」といったイスラム教やイスラム教徒への嫌悪感や危機感を示すものもありました。

こういったツイートをした人々のプロフィールを見たわけではないので彼らの国籍はわかりませんが、プロフィール写真からヨーロッパ人と見受けられました。

ここで興味深いことは、当時犯人の情報がなかったにもかかわらず「イスラム教徒によるテロ」だと人々が認識していたことです。

同じような事件がもし日本で起こったとしたら即座に「テロ」と認識されるだろうか…犯人不明の状況であれば、日本なら「重大な殺人事件が起こった」と受け止められるのではないでしょうか。

こういった事件を即座に「テロ」と認識するところにヨーロッパ人のテロに対する日頃の危機感や恐怖が表れているように感じます。

「難民を受け入れることは潜在的なテロリストを受け入れることだ」といった意見は、イスラム教徒によるテロが相次ぐ現状を踏まえると一概に差別とは言い切れないところがあります。

「憎しみを広げるのはやめよう」という冷静な呼びかけもありましたが、今後ヨーロッパでイスラム教やイスラム教徒に対する反感がさらに高まっていくことは避けられないでしょう。

イスラム化するヨーロッパ

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昨日は奇しくも、「イスラム化するヨーロッパ」という本を読んでいたところでした。ヨーロッパにおけるイスラム教徒人口の増加、しかし彼らがヨーロッパ社会に溶け込めずにいる現状、そしてイスラム過激派に傾倒していく過程などがとても分かりやすく書かれています。

イスラム化するヨーロッパ (新潮新書)

ヨーロッパにおけるイスラムに興味のある方にはおすすめの一冊ですが、実際にヨーロッパに住んでいる私にはやりきれないものが残りました。

私が暮らすドイツでは1960年代にトルコから積極的に労働者を受け入れた経緯から、トルコ系の移民が多いです。ドイツ政府は当初彼らはいずれ祖国に帰るだろうと思っていたようですが、ドイツの手厚い社会保障が気に入った彼らは国に帰るどころか、家族をドイツに呼び寄せました。

イスラム教徒は出生率が高いのでもはやトルコ系移民はドイツ社会では「少数派」とは呼べないほどの存在感を示しています。私のような東アジア系のほうがよほど少数派ですね。

さらには近年の難民受け入れも重なり、ドイツでも、他のヨーロッパ諸国でもイスラム教徒人口は増え続けているのです。

なぜイスラム教徒ばかりがテロを起こすのか

これは目下私にとっての最大の疑問です。このミュンヘンでの事件はイスラム過激派のテロではないという見方が強くなりましたが、ヨーロッパでイスラム過激派によるテロが相次いでいる現実に変わりはありません。

私にはトルコ人やパキスタン人のイスラム教徒もいるし、このブログでもご紹介したようにトルコ人男性と結婚してイスラム教に改宗した日本人の友人もいます。

また、インドネシア、ウズベキスタン、キルギスタン、トルコ、エジプト、モロッコなどのイスラム教徒が多数を占める国々を旅した経験から、普通のイスラム教徒(一般市民)はとても善良で情に厚いことも知っているつもりです。だからイスラム教やイスラム教徒を一括りにして悪く言いたくはありません。

また、世界的にみるとイスラム過激派のテロによる最大の被害者はイスラム教徒の一般市民です。イスラム教徒によるテロを語るときに、イスラム過激派とイスラム教徒の一般市民を同列に語ることはあってはなりません。

テロの原因には、ヨーロッパ諸国によるイスラム圏の植民地支配、石油資源をめぐる先進諸国の利権争いなども絡んでいて、「なぜイスラム教徒ばかりがテロを起こすのか」という疑問に納得のいく答えを見つけるのは簡単ではないと思います。

現時点でその答えをお伝えすることはできませんが、今後自分なりにイスラム教やそれを取り巻く状況について勉強していきたいと思っています。

おわりに

日本に住んでいるとあまり実感がわきませんが、この世界は混沌としています。ヨーロッパに住むようになって世界の無秩序を肌で感じるようになりました。これまでの人生で、今ほど世界の混沌を実感したことはありません。

今の状況は自由、人権、民主主義といった価値観をかかげるヨーロッパと、イスラム法による支配を掲げるイスラム過激派の「文明の衝突」の様相を呈しているような気がします。

これからヨーロッパは、そして世界はどこに向かうのか…今後も新たな気づきがあれば共有させていただきたいと思います。

ちなみにミュンヘンとニースには予定通り行くつもりです。事件の直後は厳重な警戒が敷かれますし、同じ都市を相次いで狙うより、違う都市を狙ったほうが人々を恐怖と混乱に陥れる効果が高いからです。まだテロが起こっていない大都市のほうがむしろ危険ではないかと思います。

今回の事件でミュンヘンに行くことを純粋に喜べなくなったのは悲しいですが、恐怖や悲しみに支配されてしまってはそれこそ犯罪者の思うつぼ。テロに警戒はしつつも、冷静さを失わないことが大切だと思うのです。

海外旅行先でのテロを心配している方の参考になればと思い、外務省の海外安全パンフレットへのリンクをご紹介しておきます。

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