ドイツに住むようになって驚いたことの一つが、ドイツ人の「住(家)」に対するこだわりとエネルギ-の注ぎ方。衣食住のうち、日本は衣と食にお金やエネルギ-を費やす人が多いですが、ドイツでは逆で、住に最もお金とエネルギーを注ぐ人が多いです。
もちろん個人差もありますし、世代やライフステ-ジによる違いもありますが、一般的にドイツ人のなかでは住への比重が非常に高いように感じています。
ドイツ人にとって「整理整頓は人生の半分」
ドイツの住宅は窓を大きくとっており、直接部屋が道路に面していない限り、カーテンがなかったり、レースカーテンのような薄いカーテンしかなかったりする家が多いです。
夜はともかくとして、日中外からの視線を完全に遮るような分厚いカーテンを目にすることはほとんどありません。それはドイツ人が極力自然光を採り入れることを好むことと関係があるのだと思います。
ドイツでは、多かれ少なかれ外から家の中が見えるようになっているケースが多いので、見られても大丈夫なように部屋をキレイに整えている家庭が多いです。
ドイツには、「整理整頓は人生の半分」ということわざがあります。「整理整頓を心がけることで、日々の生活や仕事に規律や秩序が生まれる。だから、整理整頓は人生の半分といえるくらい大切なのだ」という意味なのだそうです。
来客があるときに慌てて掃除や片付けをすることが多い日本人(私も含め)にとっては、なんだか耳の痛い話かも・・・
確かにドイツ人の家におじゃますると、ムダなものがなく部屋の中が整然としていて、生活感がないほどすっきりしていると感じることが少なくありません。整理整頓ができているからこそ、余計なことに時間をとられず、掃除やインテリアに専念できるのでしょうね。
インテリア雑誌から飛び出してきたかのようなドイツの家
ドイツ人の家が「キレイ」というのは、単に「片付いている」とか「掃除が行き届いている」というのとは違います。その2つはできていて当然で、プラスアルファとして家の内外を花やインテリア小物などでおしゃれに飾っている家庭が多数なのです。
しかも、花やインテリア小物などを季節によって変えている家も多く、「日本人にはなかなかここまで手が回らないなぁ」と思わされることがよくあります。
私が住んでいるのはドイツ南西部の地方都市。このあたりでは、家族が住む家は(日本人の感覚からすると)大きな一軒家がスタンダ-ドです。しかも、どこの家もおしゃれ!
初めてドイツ人ダーリンの実家を訪ねたとき、家がインテリア雑誌から飛び出してきたかのように美しくて本当に驚いたのですが、ドイツではそれはさほど特別なことではないようです。
合理主義のドイツ人は、ファッションに関しては実用性重視でさほど頓着しない人が多いのに、家を美しく整えることに関しては、執念のようなものさえ感じます。
ドイツ人はなぜそれほど住にこだわるの?
ドイツ人はなぜそれほど住まいを美しくすることにこだわるのか。私の見解では、ドイツ人は家で過ごす時間が長いことと、家族を大切にすることが理由ではないかと思います。
一般的に見て、ドイツ人の労働時間は日本人より短いです。ダ-リンのご両親は朝7時半ごろ家を出て5時ごろに帰ってきます。実労時間は7時間半ほどかと。
データでみてもこれは明らかで、OECDの統計(2012年)によると、日本では就業者1人当たりの年間平均労働時間が1745時間に対し、ドイツでは1393時間。単純にいえば、日本人よりドイツ人のほうが20パーセントも労働時間が短いのです。
日本でも所定の労働時間はドイツと同じくらいという会社が多いと思いますが、日本人はなにしろ残業や休日出勤が多く、家に帰るとご飯を食べて寝るだけという人も多いでしょう。
ところがドイツ人は帰宅時間が平均的に早いうえ、普段はあまり手の込んだ料理をしないために食事の支度や後片付けにかける時間も少ないので、平日でも夜3時間くらいはリラックスできる時間が持てるという人も多いようです。
家で過ごす時間が長いと、家を心地よい空間にしようというモチベ-ションも上がりますし、物理的にそのための時間もとれますね。
加えて、日本人が家族を大切にしないとは言いませんが、ドイツでは家族を大切にすることがもっと社会的に尊重されているふしがあります。例えば、ドイツでは家族の誕生日などのイベントのために堂々と有給休暇をとることも可能。
家族のイベントや、日常的に家族で過ごす時間を大切にすることから、家族が一緒に過ごす場として家が大事になってくるのだと思います。加えて、日本に比べホームパーティーなど人を家に招く機会も多いので、そもそも人に見せるという前提で住環境を整えているように感じます。
おわりに
日本は「衣と食にこだわり、住にはあまりだわらない」、ドイツは「衣と食にはあまりこだわらないけれど、住にはとてもこだわる」といった具合に、衣食住において重点を置くポイントがそれぞれの国によってある程度定まっているのが興味深いところですね。