言葉の壁に文化の壁…色々な壁がある国際結婚ですが、パートナーの国によっては「宗教の壁」に遭遇することも。
私の高校時代のクラスメイトであるzeynepちゃんは、トルコ人男性と結婚し、イスラム教に改宗したイスタンブール在住日本人女性です。「zeynep」とは彼女のムスリム名で、ムハンマドの娘の名前だそう。
2015年10月、トルコを訪れた私は、イスタンブールで久しぶりにzeynepちゃんと再会しました。彼女は頭にスカーフを巻き肌を隠したムスリムファッションで、もうすぐ2歳になる息子ちゃんを連れての登場。
「日本人女性がトルコでイスラム教徒として暮らすっていったいどんな感じなの!?」という私自身の興味もあり、彼女に「どうやってトルコ人の旦那さんと出会ったの?」「なぜイスラム教に改宗することを選んだの?」などなど、インタビューをしてみました。
トルコ人の旦那さまとの出会いは?
トルコの音楽に興味をもったのがきっかけでトルコを訪れることにした私。旦那さんとは、トルコへのツアー旅行中、イスタンブールにあるマーケット「スパイスバザール」で出会いました。
ツアーのため買い物時間は10分と限られていましたが、私が欲しいと言った商品を旦那さんがダッシュで見つけてきてくれたのです。それは旦那さんのお店にはない商品だったので、「優しい人だなぁ」と感じました。
このときの旅行でトルコが大好きになり、「またトルコに来たい!」と思ったのです。2回目のトルコ訪問はそれから半年後のことで、その時にはすでに旦那さんは友達以上の存在になっていました。
旦那さまと結婚しようと思った決め手は?
日本に帰ってしばらくしてから旦那さんとメールのやりとりをしました。「元気?」「今なにしてる?」など頻繁にメールをくれて、細やかな気遣いができるところに惹かれました。
でも一番は、仕事ができるところです!2度目にトルコを訪れた時に、旦那さんのお店で彼が仕事をしている姿をじっと観察していました。
旦那さんは誠実な対応でお客さんの心をつかむのがうまいんです。私のときもそうでしたが、自分の店にはない商品やサービスであっても色々とアドバイスをくれますし、とにかく話し方や勧め方が上手!
いろんな国からやってきた旅行者が「彼はグッドセールスマンだ!」というのを何度も聞きました。
イスラム教徒になると決めたのはなぜ?抵抗や葛藤は?
昔はトルコも改宗しないと籍を入れられなかったのですが、今は無宗教の人でもイスラム教を信仰するトルコ人との結婚が可能です。
結婚するときに旦那さんに「イスラム教徒に改宗してほしい?」と聞いたら「改宗してくれたほうが嬉しい」と言われたことと、ご家族が敬虔なイスラム教徒だと聞いたので入信することにしました。
「イスラム教徒は皆兄弟」という教えがあるので、「改宗していればご家族にも受け入れてもらいやすいだろうな」との思いがありました。中東の音楽や文化に興味があり、イスラム教やトルコに関する本もたくさん読んでいたのでイスラムについての予備知識がある程度あり、イスラム教徒になることに対してあまり抵抗はありませんでした。
もともと無神論者ではなかった、というのも大きいです。以前からなんとなくいるような気がしていた神様が、「アッラー」という名前に変わっただけ、という感じです。
でも、「お化粧やネイルをしていると、アップテス(祈りの前のお清め)をしたことにならない」と聞いたときは、おしゃれが好きなのでちょっと悲しかったです。
「私がもしイスラム教徒の男性と恋に落ちていたら、イスラム教に改宗していただろうか・・・これは正直言ってわかりません。
いくらイスラムに関する予備知識があったとはいえ、実際に改宗に踏み切ったのはzeynepちゃんの旦那さんに対 する愛情と信頼のなせるわざではないでしょうか。」
4.日頃イスラム教の教えは意識している?
親戚の方々が敬虔なイスラム教徒なので、自然とイスラムの教えに沿った生活になっていると思います。(女性は)「美しいものは隠しておきなさい」との教えに従って髪の毛を隠しているのが私のもっともイスラム教徒らしいところでしょうか。
旅行中でも豚肉は食べないように気を付けていますし、お祈りもさぼりがちですがやっています。もう少し子供が大きくなったらコーランの勉強とトルコ語の勉強をしに行きたいと思っています。
コーランの内容は「嘘をつかない」とか、「清潔にするべき」とか、人間として基本的なことも書いてあって、日本できちんと教育を受けてきた方なら意識しなくてもできることが書かれています。
自己啓発本に近いことも書いてあるんですよ。
コーランの中で一番気に入っている教は「人を裁くのは人のすることではない、神がすることだ」というもの。「人を裁くことは神がすることだから人の悪口を言ったり、怒りを表現しなくてもいいんだよ」という意味です。この教えは嫌なことがあった時のストレス軽減に役立っています。
面白いところでは「母親は、乳児に満2年間授乳する」という教えがあるのですが、それは今のWHOが推奨してる期間と一致しています。
5.トルコ生活、イスラム教徒としての暮らしで大変なことは?
現在は同じ建物に旦那さんの両親が住んでいて、日本で言う二世帯住宅での生活です。イスラム教徒が大多数の国で、イスラム教徒として暮らすことは全然大変ではありません。
親戚はみんな敬虔なイスラム教徒なので「イスラム教徒であることが当たり前」という感覚のようで、日本人の私がイスラム教徒であることに対しても特別な反応はありませんでした。
これからさらにさらに発展していくであろう、伸びしろの大きいトルコでの生活はとても楽しいです!住んでいる人たちもパワフルで人懐っこくて親切。
ただ、人懐っこすぎてちょっと困ることもあります。「出産祝いいくらもらった?」とか「日本での収入はいくらだった?」とか会った初対面で聞かれたりして(笑)
文化が違うから、行事も違います。たとえば、出産後すぐに親戚たちが子供の顔を見にやってくるなど、向こうがよかれと思ってしたことでも、日本人の私にとっては困る・・・ということもあります。
感じ方が違うので、慣れるまでは大変だし、今でもまだまだ驚かされることもたくさんあります。
また、急に停電や水道が止まったり、ということもあります。おうちによっては発電できるようになってたりタンクがあったりしますが、うちはないので困りますね。
トルコでの暮らしを楽しむ秘訣
環境に合わせて臨機応変に対応することで、できるだけ大変なことはしないように生きていこうと思っています。
国際結婚だから無理はせず、自分らしくできることはするけど、できないことは無理にしようとしないように。改宗したのも、アッラーのお導き、かな!?
zeynepちゃんと私は、地元・和歌山の高校の同級生でした。近くに大阪、京都、神戸といった大きな街があるため、海外はおろか東京にすら出ていく人が少ない地方都市、和歌山。
そんな土地柄で高校の同級生だった私たちが思いがけず外国人のパートナーと出会い、それぞれトルコとドイツという日本から遠く離れた異国での生活を送っています。私たちがセーラー服を着た地方の高校生だったあの頃、誰がそんな未来を想像できたでしょうか。
イスラム教に改宗したとはいえ、あくまでも自然体のzeynepちゃん。宗教に自分を合わせようとしているというよりも、イスラム教のなかに自分自身が共感できる部分を見出しているという感じがします。
とはいうものの、自分の道を自覚的に選ぶ意思、そしてその選択に責任をもつしなやかな強さも持ち合わせているはず。「トルコでの生活が楽しい!」と言えるのも、新しいチャレンジを楽しめるマインドがあるからこそだと思うのです。
おわりに
トルコとドイツ、環境はまったく異なりますが、彼女の生き方、考え方を通して私もエールをもらった気がします。
zeynepちゃんの旦那さま、たろうさんはイスタンブールの旧市街で「Ayasofya sweet-spice」というお店を開いています。たろうさんは日本語がペラペラで、なんと日本のテレビ番組出演歴もあり!お店にはzeynepちゃんも不定期で出勤しています。
トルコに行く予定がないという方でも、ネットショップでお買い物ができちゃいますよ。
zeynepちゃんのストーリー、いかがでしたか。人生って予想を超えた出来事があるからこそ面白いと思いませんか?人の数だけ人生がありますね。