言葉を大切にしたいすべての人に読んでほしい感動小説「本日は、お日柄もよく」

久しぶりに、「これはみなさんに紹介したい!」と思う小説に出会いました。それが原田マハ著「本日は、お日柄もよく」

本書を読み終わった日の夜、この感動をどうやってみなさんに伝えようかと考えるあまり、なかなか寝付けなかったほどです。

原田マハ著「本日は、お日柄もよく」


原田マハ著の小説「本日は、お日柄もよく」は、主人公のOL・二ノ宮こと葉がひそかに想いを寄せていた幼なじみの結婚式に出席するところから始まります。

冒頭シーンだけを読めば、仕事や恋愛といったOLの日常を描いた小説かと思いきや、「伝説のスピーチライター」との出会いを機に、こと葉の日常に大きな変化が訪れ、しだいに国政にかかわる壮大なスケールの物語へと発展していきます

ありふれたOLだったこと葉が、「仕事人」として一気に階段を駆け上がっていく様子は、ある種現代のシンデレラストーリーといえるでしょう。

「言葉の力」を教えてくれる一冊

「言葉の力」をメインテーマにしただけあって、本書の最大の魅力は、随所に散りばめられた美しい言葉の数々

「伝説のスピーチライター」はもちろんのこと、こと葉の祖母や幼なじみ、すでにこの世にはいないものの、物語のカギを握る人物が紡ぎ出す言葉は、どこまでもあたたかくて、強くて、優しいのです

そんな素晴らしい言葉の数々は、結婚式の祝辞、選挙演説、葬儀の弔辞など、さまざまな形で登場します。本書を読むあいだ、何度も涙があふれ、人の心を動かす美しい言葉に触れる喜びを感じました。

「言葉を大切にしたい」と思うすべての人へ

私がライター・ブロガーとして活動するようになったのは、言葉の力を信じていることが根本にあります。

言葉はしばしば人の心を動かし、行動を変える。」― そう思ってきたからこそ、ライターになる前から、友人との会話にしても、以前の職場での企画書や社内通達にしても、自分が納得できる言葉を選んで使ってきました。本書を読んだことで、もっともっと、人の心を動かす素敵な言葉を生み出せる人になりたい。改めてそう思いました。

本書は、ライターなど言葉を操ることを生業にしている人はもちろんのこと、「言葉を大切にしたい」と思うすべての人に読んでほしい小説です。

なにしろ、言葉は人間関係を育み、時には人生さえも変える、私たちが生きていくうえで不可欠なものなのですから。

最後に、本書からの一節をご紹介します。

「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩きだしている。」

言葉の力がぎゅっと詰まった「本日は、お日柄もよく」。


近年読んだ小説のなかで、特に感動した池井戸潤著「空飛ぶタイヤ」、特に面白かった百田尚樹著「夢を売る男」に加え、さらにお気に入りが増えたことを嬉しく思います。