「猫カーニバル」が話題!ドイツ黒い森地方・フィリンゲンのカーニバルが面白い

2018年2月8日、ドイツの黒い森地方の町フィリンゲンのカーニバルに行ってきました。

カーニバルといえば、ブラジルのリオのカーニバルやフランスのニースのカーニバルが有名。「カーニバル=ドイツ」というイメージはあまりないかもしれませんが、ドイツでもケルンやマインツのカーニバルをはじめ、各地でカーニバルが開催されます。

私が暮らすドイツ南西部の黒い森地方も、盛大かつユニークなカーニバルが催されることで知られています。

ドイツのカーニバルの由来は?

まず最初に「カーニバルってそもそもどんな意味があるの?」というお話をしておきましょう。

ドイツのカーニバルはもともと、キリスト教にちなんだイベント。日本では「カーニバル」というと、「華やかなお祭り」や「パレード」のような意味合いとして受け止められがちですが、「カーニバル」とはラテン語で「carnem(肉を)levare(取り除く)」に由来し、日本語では「謝肉祭」と訳されます。

かつてキリスト教徒には、イエス・キリストの復活を祝うイースター(復活祭)の前の約40日間を断食と祈りで過ごす習慣がありました。

その断食に入る前に、思いっきり肉や乳製品などを味わいつくしておこうと始まった食べ納めの祭りが、現在もキリスト教圏に受け継がれているカーニバルの原型なのです。

ドイツでは、「カーニバル」は地域によって「カーネヴァル (Karneval)」、「ファシング (Fasching)」、「ファストナハト (Fastnacht)」などと呼び方が変わり、南西部の黒い森地方では「ファスネット(Fasnet)」と呼ばれます。

現代のドイツにおけるカーニバルは、宗教色が薄れ、「みんなで盛り上がって憂鬱な冬を吹き飛ばそう!」といった意味合いが強くなっています。

各地でカーニバルのパレードが開かれる2月上旬~中旬のドイツでは、あちこちで仮装した人々や奇抜なファッションの人々を見かけることでしょう。

「猫カーニバル」として話題に!フィリンゲンのカーニバル

南西ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州に位置する黒い森地方の町、フィリンゲン(Villingen)のカーニバルは、日本でも「猫カーニバル」として一部ネット上で話題になりました。

フィリンゲンのカーニバルには19世紀からの歴史をもつ「猫の音楽(Katzenmusik)」と呼ばれる音楽隊が登場するイベントで、それにちなんで猫に扮した仮装行列が登場するのです。

なぜ「猫の音楽」などという名前がついたのか。それは、ドイツでは「猫は下手なミュージシャン」といわれていることに関係します。

19世紀にフィリンゲンで結成されたミュージシャングループは、皆が驚くほど演奏が上手でした。「猫のミュージシャン」なんて現実にはありえないわけですが、「ありえないほど上手い」ということで、「猫の音楽」と呼ばれるようになったのです。

猫ヒゲを描いて猫耳をつけた女の子たちがパレード

日本で「ドイツの猫カーニバルがかわいすぎる!」と話題になったのが、フィリンゲンのカーニバルで猫に扮した女の子たちがパレードするシーンです。

フィリンゲンのカーニバルのパレード(Großer Kinderumzug)は猫オンリーというわけではないのですが、「猫の音楽」と呼ばれるだけあって、町の人々の猫に対する思い入れは深いよう。

猫のヒゲを描いて猫耳をつけた女の子たちがパレードしたり、猫の仮面をかぶった人々が行進したり、猫のイスに座った王子らしき少年が登場したりと、なかなかの「猫推し」です。

貫録漂うおじさまがたが身に着けているジャケットにも、猫のイラストが描かれていたり、猫のバッジが付いていたりと、細かいところまで抜かりはありません。

ドイツのカーニバルでは、地域ごと町ごとに決まったかけ声があるのですが、フィリンゲンのカーニバルの猫仮装行列のパートでは、かけ声も「ミャウ(Miau)」。

パレードの出演者が「ミャウ!」と叫べば、観客も「ミャウ!」と答えます。立派なお腹をしたおじさまたちも含め、みんながミャウミャウ言っている光景はかなり面白いです。

黒い森地方のカーニバルは観客参加型

牛コスチュームの男の子は観客

ドイツの黒い森地方のカーニバルの面白いところは、パレードの出演者と観客とのあいだに交流があるところです。

そもそも、観客も着ぐるみを着たり、フェイスペインティングをしたり、ユニークな帽子をかぶったりと、多かれ少なかれ普段と違うファッションをしている人が大半。観客といっても、「ただ観る」というよりは、「自分も参加する」というスタンスなのです。

この乳母車には本当に赤ちゃんが乗っているのですが、不思議なのは泣いたりぐずったりする子がいなくてみんな静かなこと

黒い森地方のカーニバルでは、パレードの参加者は観客にお菓子を配ります。特に小さな子どもに重点的に配っていますが、かけ声が大きい人は大人でも比較的たくさんのお菓子をもらっている人も。

フィリンゲンのカーニバルでは、私はひたすら一生懸命に写真を撮っていたのですが、それでもお菓子を2つもらいました。

猫に扮した女の子がお菓子をプレゼント

小さな子どもの出演者が、同じくらいの小さな子どもにお菓子をあげている姿は、なんともかわいらしく、微笑ましいです。

さきほどご紹介した猫のパートでは、「ミャウ」がかけ声でしたが、黒い森地方のカーニバルのかけ声の定番は、「ナリー(Narri)」「ナロー(Narro)」。

パレードの出演者が「ナリー!」と叫んで、観客が「ナロー!」と返せばお菓子が飛んでくる、そんな感じです。しかし、観客も受け身というわけではなく、観客が「ナリー!」と叫んで、出演者が「ナロー!」と答える、そんな場面も見られます。

ナロが男の子のニット帽をとろうとしています

なかには観客の帽子を奪ったり、観客に紙吹雪を浴びせたりしていたずらする出演者もいるのでご注意を。

不気味だけど目が離せないナロたち

ドイツの黒い森地方のカーニバルは、ゲルマン民族の原初的な祭礼の姿が受け継がれているために、ドイツのなかでもかなり独特。「ヨーロッパの奇祭」と呼ばれています。

なかでも特徴的なのが、「ナロ」と呼ばれる木のお面をかぶった道化師たちの姿。かけ声の「ナリー!」「ナロー!」はここからきているんですね。

頭から動物の尻尾をぶら下げ、たくさんの鈴を身に着けたナロたちが歩くたびに、カラカラと鈴の音が響き渡ります。

微笑んで見えるように見えるものから、何かを企んでいるかのように見えるものまで、ナロの表情はそれぞれに違いがあって目が離せません。

Großer Kinderumzug(子どもたちの大パレード)の名の通り、フィリンゲンのカーニバルには子どもたちが大勢登場

ほかにも魔女やら、「なまはげ」のような不気味なキャラクターやら、鳥やら、山羊やら、とにかく色々なものが登場します。どれもお面や衣装が独特で、一度見たら忘れられないほどインパクト抜群。

馬は全部で4頭登場しました

さらには馬や大掛かりな車両まで登場するという盛大さ。

この時期、黒い森地方では小さな町でも各地で大規模なパレードが開催されるわけですから、カーニバルにかけるドイツ人の熱意が感じられるというものです。

フィリンゲンのカーニバルへのアクセス

「フィリンゲンのカーニバルに行ってみたい!」と思った方のために、フィリンゲンのカーニバルへのアクセスをご紹介しておきましょう。

今回ご紹介したパレード「Großer Kinderumzug」は、バーデン=ヴュルテンベルク州のフィリンゲン駅「Villingen Bahnhof (Schwarzward)」からすぐの旧市街で開催されます。

駅から町の中心までは徒歩3分ほど。駅舎を出たらまっすぐ歩いていくだけなので、迷うことはありません。

パレード開始前の風景

カーニバルのパレードが通るのは、町の4本のメインストリート(Obere通り、Niedere通り、Bicken通り、Riet通り)を中心とした中心街。あまり観光地という雰囲気ではありませんが、古い町並みがよく保存された美しい町です。

フィリンゲンのカーニバルはそれほど混雑せず、比較的のびのびと見られるので、「お祭りは面白そうだけど人混みが嫌だなぁ」という人にもおすすめです。「こんなに盛大なパレードを、押し合いへし合いせずに観られていいの?」と思ってしまうほど。

どれくらいのんびりしているかというと、早くから場所取りをしなくても良くて(15分くらい前で十分)、パレードが始まった後も場所を移動してすき間を見つけて写真が撮れるくらいです。

もちろんそれなりに観客はいますが、大都市とは比べ物にならないくらいストレスフリーで楽しめますよ。

おわりに

今回のフィリンゲンのカーニバルは一人で観に行ったのですが、あまりにも何度も「ナリー!」「ナロー!」のかけ声を聞いたせいで頭から離れなくなり、家に帰ってからもダーリンを相手に「ナリー!」「ナロー!」と言い合っていました。

日本人はあまり訪れない南西ドイツの黒い森地方ですが、ドイツのなかでもユニークな文化が残っているエリアです。

近年日本でも有名になった天空の城「ホーエンツォレルン城」も同じバーデン=ヴュルテンベルク州にあるんですよ。ぜひ自然豊かでのんびりとした南西ドイツに遊びに来てください。

KATZENMUSIK VILLINGEN公式サイト(ドイツ語)