私は約2年半ドイツに暮らしたのち、日本に帰国しました。
先日「水がどこでも買える!ドイツから日本に帰国して嬉しい13のこと」でご紹介したように、「嬉しいなぁ」「快適だなぁ」と思うこともたくさんある一方で、ドイツやヨーロッパに慣れてしまうと、「えっ!?」と思うこともあります。
海外で生活していたからこそ、自国で感じる違和感。必ずしもすべてがネガティブな内容というわけではありませんが、いわば逆カルチャーショックのようなもの。
今回は、日本に帰国して違和感を覚えた12のことをご紹介したいと思います。
町並みがごちゃごちゃしている
ヨーロッパと日本の風景の大きな違いのひとつがこれ。ドイツの町づくりの特徴は、町が旧市街と新市街に分けられていることと、商業地域と住宅地、農地などが比較的はっきりと分かれていることです(例外もありますが)。
ドイツの多くの町には旧市街と新市街があって、旧市街には歴史ある広場や教会、商店やレストランなどが、新市街には大規模な駅や大規模なオフィスビル、大型アパート、大型スーパーなどがあります。
また、ドイツでは「町」と「町でない部分」が比較的はっきりとしていて、町と町のあいだにはひたすら畑や森が広がっていることが多いです。
一方、日本では旧市街と新市街の区別はほとんどなく、新しいものも古いものもごちゃ混ぜですし、商業地域と住宅地、農地がほとんど区別なく混じり合っています。「美観」への意識が低いために、けばけばしいネオンや看板も多いですね。
電車の窓からこうした日本の町並みを見ると、整理されていないものが一気に迫ってくるようで、情報過多というか、見ているだけで疲れるような気分になったことがあります。
以前は同じ風景を見て何も思わなかったはずが、整理されたヨーロッパの町並みを見慣れると、日本の町並みはカオスに感じられるようになってしまいました。
役所でお礼を言われる
市役所で住民登録をし、国民保険の加入手続きをしたときのこと。
市役所の窓口で対応してくれた若い男性職員は、とてもにこやかかつ親切で、手続きが終わって帰るときには「ありがとうございました!」と言ってくれました。
もちろん懇切丁寧な対応は素晴らしいことではあるのですか、「私、何かお礼を言われるようなことしたかなぁ」と考えてしまいました・・・ドイツには、役所であっても行政「サービス」という日本の考え方を少しでいいから見習ってほしいです。
ショップの呼び込みがうるさい
日本は、ショップの呼び込みが多いですね。
若い女性向けのアパレルショップでは、よくスタッフが「どうぞご覧くださいませ~!」や「セール開催中です~!」などと叫んでいます。高級志向でない食料品店や雑貨店でも、「どうぞ中ほどまでご覧ください~!」などという呼び込みをよく耳にします。
これって必要なんでしょうか?ヨーロッパでは、この類の呼び込みがほとんどなく、静かな環境で買い物することに慣れてしまうと、こうした呼び込みが耳障りに聞こえるように。
「ご覧ください」と言われなくても見たければ見ますし、セール開催中であることは店頭のポップなどを見れば明らかです。
店によってはこうした呼び込みが効果的な場合もあるでしょうし、「賑やかさを演出するのが大事」という考え方もわかりますが、個人的には「静かに買い物させてくれ~!」という気持ちのほうが強いです。
日本ではこうした呼び込みに慣れている人は多いと思いますが、「言われてみればうっとうしい」と感じる人は実は多いのではないでしょうか。
不要なセールストークが多い
ショップの呼び込みに加えて、あまり意味のないセールストークにも違和感を覚えます。
個人的に一番気まずいのが、ラックに架かっている服を手にとって見てみたら、「自分が思っていたのとは違う」と気づきラックに戻した瞬間、「再入荷したばかりなんです」や、「ご試着いただけますよ」など、たった今自分が興味を失った商品を売り込まれること。
日本のアパレルショップでは、販売員に対し「とにかくアプローチしましょう」と指導することが多いので、販売員さんも「アプローチしないと!」と思っているのでしょうが、このタイミングの悪さは逆効果ですよね。
ぱっと見て、明らかにセール開催中の店で「今セールでお安くなってますよ」などと言われるのも、「見ればわかるよ」と思ってしまいます。
ドイツでは、ショップのスタッフと目が合っても “Hallo!”と挨拶されるだけのことが多く、いわゆる「アプローチ」をされたことがほとんどないので、日本のアパレルショップでアプローチをされると逃げたくなります。
「何かお手伝いできることがあればお声がけください」くらいで、すっと引いてくれると一番いいのですが。
どこでも同じような服を売っている
ドイツにも一応「トレンド」というものがありますが、「今年はボタニカル柄の服をよく見るなぁ」といった程度で「町を見れば今シーズンの流行が手に取るようにわかる」というレベルではありません。
ところが日本に帰ってくると、どこのアパレルショップでも同じような服を売っているではありませんか。キュート、エレガント、カジュアルといったテイストの違いはあるものの、テイストが同じ店をいくつか周れば、同じような服が相当数見つかります。
あまりにも同じような服ばかり並んでいると、その服を着たくなくなるひねくれ者は、日本にはあまりいないのでしょうか・・・
BGMの不協和音化
またまたショップの話で恐縮ですが、複数のショップが同じ空間に並んでいるファッションビルの場合、それぞれのショップのBGMが混じり合ってしまっていることってありませんか?
ドイツでは、アパレルショップにせよ、レストランにせよ、店舗でBGMが流れていること自体があまりないので、大音量のBGMが流れていて、しかもそれらがケンカし合っている状況はとても気になります。
日本ではいたるところでBGMが流れていますが、そもそもBGMってそんなに必要なものなのでしょうか。一旦ドイツの静かな環境で買い物や食事をすることに慣れてしまうと、BGM自体がさほど必要のないものに思えてきます。
どこでも袋をくれすぎる
ドイツを含むヨーロッパの多くの国では、買い物するときのレジ袋は有料が常識。これはスーパーだけでなく、高級ではないアパレルショップやベーカリーなどにも当てはまります。そのため、ドイツで生活していると、買い物したときに頼んでもいないのに袋に入れられることはほとんどありません。
ところが、日本では買い物をするたびに袋が増えます。日本でも一部レジ袋有料化の動きがありますが、サービス過剰のお国柄だけあって、なかなか浸透していませんね。現在私は実家で暮らしていますが、実家の近くにある複数のスーパーでは、レジ袋は無料です。
スーパーだけでなく、どこに行っても、どんな小さなものでも袋に入れようとしてくれるので、「袋はけっこうです」と断ることも。
明らかにバッグに入りそうな小さなものなら、「テープでよろしいですか」と聞いてくれればいいものの、「もし文句を言われたらどうしよう」と考えてしまい、なかなかそうできないんでしょうか。
やたらと人件費をかける
日本って、本当に人件費をかけている国だなぁと思います。たとえば工事現場は、施工業者は工事そのものだけでなく、安全管理や周辺の交通整理も自分たちの仕事と考え人を配置します。イベントなどがあって混雑する場所での誘導人員の配置も手厚いですね。
ところが、ドイツも含め諸外国は必ずしもそうではなく、工事をしていても、そこで働いているのは純粋に作業をしている人だけで、安全管理のための人員はいないということもあります。その場合、安全管理は通行人の自己責任なのです。
ひたすら旗を振るという仕事をしている人なんて、日本以外の国ではほとんど見たことがありません。
確認がやけに丁寧
純粋なサービス精神なのか、「後でクレームになったら」という警戒心なのか、日本で買い物などをするとやたらと丁寧に確認をされることがあります。
先日某輸入食材チェーンで豆の缶詰を2個買ったら、「こちら、それぞれ違う種類のお豆ですが、よろしいでしょうか」と聞かれ、「なんでそんなことを聞くの?」と戸惑いながら「…はい」と答えたことがあります。心の中で、「これがひよこ豆とレンズ豆であることはわかってますけど…」と思いつつ。
商品パッケージに豆の写真が印刷されているのですが、ひよこ豆とレンズ豆って似ても似つかず、間違えることはほとんどあり得ないような気がするので、この一件は本当に不思議でした。
ドイツなら、何かを間違えて買ったとしても、それは買った人の自己責任なので、何を買うにしても「こちらはこのような商品ですが、お間違えないでしょうか」などと確認されることはほぼありません。
親切なのはいいのですが、日本のサービスは過保護というか、色々とわかっていて自分で判断できる人にとってはありがた迷惑なことも多い気がします。
チェーン店が多すぎる
一度ヨーロッパで生活して日本に帰ってくると、チェーン店の多さに驚きます。特に目につくのが飲食店。
ドイツでもスーパーやドラッグストア、家電量販店などはチェーン企業が多いのですが、マクドナルドやスターバックスなどの外資を除くレストランやカフェ、ベーカリー、スイーツショップなどは圧倒的に小規模経営が多いのです。
チェーン店があったとしても、ごく狭い一部地域だけに出店しているローカルチェーンや、系列のレストランを2~3店舗出店しているといった「チェーン」とも呼べないような小規模チェーンが多く、日本のように全国的に名の知られている飲食チェーンが多数ある状況とは程遠いです。
チェーン店はなにかと便利ですし、私自身助けられることもありますが、あまりにも全国チェーンの店ばかりになってしまうのは、各地方の文化が失われていくようでなんだか悲しいですよね。
決して「大規模チェーン店=悪」ではないのですが、個人的には個人経営の店や、限定された地域にしかない小規模チェーンを応援したいと思うようになりました。
自転車が専用レーンを走らない
日本の自転車ドライバーって、どうして自転車専用レーンがあるのにそこを走らない人が多いんでしょう。
それは日本の自転車レーンが中途半端(途中で切れたり狭くなったりする)なせいもあって、自転車ドライバーだけの責任ではないと思いますが、町を歩いていると四方八方から自転車が突っ込んでくるので、大げさではなく恐怖を感じます。個人的に特に恐いと思うのが、東京と大阪の下町および京都でしょうか。
ドイツでは、日本より自転車レーンが普及していること、自転車レーンがない場所では、自転車は自動車と同じレーンを走らなければならない(日本でも本当はそうですが、あまり守られていません)こともあって、歩行者に向かって自転車が走ってくるようなことはあまりありません。
日本に住んでいたときは、歩道を自転車が走ることに慣れてしまっていましたが、一度そうでない環境に慣れると、これがいかに危険かがわかります。
みんながスマホをいじっている
日本でお馴染みの光景が、そこにいる多くの人がスマホをいじっているというもの。
電車内、レストランに入店するまでの待ち時間、下手をすれば歩きながら・・・一時でもスマホを手放したら死んでしまうのではないかというほど、ひたすらスマホを触り続けている人もいます。
でも、こうした光景って、ドイツではあまり見かけないんです。
電車に乗っているドイツ人が何をしているかというと、隣の席に座った人(知らない人の場合もある)とおしゃべりをしたり、本を読んだり・・・意外に何もせずぼうっとしている人も多いです。
もちろんスマホをいじっていたり、電話をしたりしている人もいますが、日本ほどみんながみんなというわけではありませんし、歩きスマホもほとんど見かけません。
不思議なのが、日本だけでなく、バンコク、シンガポールなど東アジアと東南アジアのある程度発展している都市では、電車内などで多くの人がスマホをいじる光景がお約束になっていること。その反対に、ヨーロッパの人々はアジア人ほど外出先でスマホに執心しているように見えません。
何がこの違いを生むのか、はっきりとはわかりませんが、ひとつにはアジア人の「新しいもの好き」な気質がそうさせるのかもしれないと感じています。
おわりに
一時的に日本を離れただけでも、以前は当たり前に感じていたり、気にもしなかったようなことが、ドイツとの違いからクローズアップされるようになりました。
ちょっとばかし海外に出たからといって、上から目線で日本や日本人を批判するつもりは毛頭ありませんが、これは一度でも外に出てしまった人の宿命ですね。
労働環境やジェンダーなど、日本に関して思うところはもっと色々とありますが、今回はまずライトなものをご紹介。ほかのトピックについてはまた追って考えたいと思います。