2019年8月、お盆休みを利用して、韓国旅行に行ってきました。
「反日デモの盛りのこんな時期に!?」と思われそうですが、韓国旅行を決めたのは今回の輸出規制が大ごとになる前のタイミング。いささかの不安もありましたが、Twitterなどで最近韓国に行った人の声を調べ、「身の危険はないだろう」と判断したので、決行することにしました。
結論からいえば、日韓関係が「最悪」といわれる今の状況下でも、身の危険や不安を感じることはなく、ごく普通に旅行が楽しめました。
「すでに韓国旅行を予約したけれど、行っても大丈夫か不安」「キャンセルしようか迷っている」という人に向けて、今の韓国旅行の様子をお伝えしたいと思います。
悪化の一途をたどる日韓関係
ご存じの通り、2019年7月から、日本政府による韓国への輸出規制の影響が表面化し、日韓関係改善の糸口が見えない状況です。
日本のテレビニュースでは、「現在の日韓関係は近年で最悪」と評され、韓国における日本政府に対する抗議デモの様子や、日本製品の不買運動の様子などが盛んに報じられています。
不買運動の一環として、訪日旅行をキャンセルする韓国人も続出。旅行会社にもよりますが、韓国人の訪日旅行のキャンセル率は、50パーセント弱から80パーセント台にまで達しており、新規の予約はほとんどないそうです。
私は韓国人旅行者が多く訪れる福岡に住んでいますが、7月末ごろから目に見えて韓国人観光客が減っていて、日韓関係の悪化を肌で感じています。
2019年夏の韓国旅行は危険?キャンセルすべき?
こうした状況を踏まえ、日本でも「今、韓国に行くのは危険ではないか」という認識が浸透。ネット上では、「今韓国旅行なんかしたら、何をされるかわからない」「今の韓国では、日本語が話せない(身の安全を考えるなら日本語を話すべきではない)」といったコメントも目立ちます。
すでに韓国旅行を予約している人が、こういったコメントを目にすると、今の韓国がとんでもない状況のように思えてきますよね。しかし、実際に今の韓国に行ってみると、こうしたコメントは過剰反応であると感じられました。
私が韓国を訪れるのは、3度目。今回は8/9から4泊5日の日程で釜山と慶州に行ってきましたが、街の様子はいたって穏やか。過去2回の韓国旅行と大きな差を感じることはなく、ごくごく普通で拍子抜けするほどでした。
レストランや地下鉄などで日本語を話しても、睨まれるようなこともなければ、じろじろ見られるようなこともなく、私個人に対する敵意を感じることはまったくありませんでしたし、身の危険を感じることも一切ありませんでした。
少なくとも私の経験からは、「こんな状況下でも、韓国旅行は問題なし」といえます。
韓国旅行を安全に楽しんでいる日本人はたくさんいる
これまでに60ヵ国を旅し、韓国にも過去2回訪れている私も、さすがに今回ばかりは「大丈夫かな?」と不安になり、行く前に色々と情報収集をしました。
しかし、ネットで検索しても直近で韓国に行った日本人の生の声はほとんどありません。「しばらく韓国旅行はやめたほうがいい」と言っている人も、直近で韓国に行っているわけではなく、単なる想定や憶測で書いていたり・・・
そこでTwitterを見てみると、「こんな状況の中、韓国に行ったけど、普段と変わらず楽しめました」「不安もあったけど、韓国人はみんな親切でした」といったツイートがたくさん。最終的には、そうしたタイムリーな生の声を見て、「日本人というだけで危害を加えられるようなことはない」と判断しました。
実際に韓国を訪れてみると、例年よりは日本人旅行者が減っているようですが、お盆休みということもあり、釜山の繁華街を歩けば日本人がたくさんおり、皆さん穏やかな表情で旅行を楽しんでいました。
日本語で会話することも何ら問題なし。地下鉄車内で大声で話している日本人の家族連れがいて、日本人の私ですら「迷惑だな」と思いましたが、韓国人の乗客はそれほど気に留めている様子もありませんでした。
こうしたことから、「今の韓国で日本人とわかれば、何をされるかわからない」といったコメントは、極論ではないかと思われます。
韓国情報は発信者によって180度異なる
最近、韓国にまつわる情報を収集して実感したのが、「韓国に関する(日本語の)情報は、発信者によって180度異なる」ということです。
日本には、韓国や韓国人が大嫌いな層がいて、そういった人々は、日ごろから「韓国は危険な国だ」という情報を広めようとしています。現在のように日韓関係が悪化し、多くの人が韓国旅行の安全性に不安を抱き始めると、ここぞとばかりにあることないことを吹聴する人もいるんですね。
7月末には、「友達がソウル駅近くで韓国人男性6人くらいに囲まれ袋叩きに合いました。警察に行きましたが全く相手にされなかったとの事です。」というツイートが投稿されましたが、現地警察や日本の外務省、日本大使館も把握しておらず、今となっては「デマの可能性が高い」とみられています。
「多分大丈夫だろう」といった根拠のない楽観は禁物ですが、韓国旅行を実際以上に危険に見せようと、意図的に嘘や誇張を含む情報を流している人がいるのも事実。何が真実かを見極めるのは容易ではありませんが、すべてを鵜呑みにしないように注意したいものですね。
ちなみに、私自身は韓国が特別好きでも嫌いでもありません。韓国政府や韓国メディアに対しては、憤りを感じる部分も多々ありますが、それと韓国人一人ひとりに対する感情は別ものです。かといって、K-POPや韓国ドラマはまったくわからず、いわゆる「韓国好き」でもありません。
親韓でも反韓でもないからこそ、できるだけフェアな目線で今の韓国旅行の現状をお伝えできるのではないかと思いました。
予想以上に穏やかだった釜山
実際に韓国を訪れるまでは、「あちこちにボイコットジャパンの張り紙があるのだろうな」とか「反日デモを目にするかもしれないな」と覚悟していましたが、現実の釜山は、思っていた以上に普通でした。
「ボイコットジャパン」の張り紙や横断幕も、あるにはありましたが、予想よりもずっと数が少なく、目に入ったのは4回ほど。ローカルエリアでは事情が異なるかもしれませんが、日本人も多く訪れる観光地や繁華街では、あまり目立っていません。
加えて、日本人だからという理由で冷たい態度をとられることもなかったように思います。むしろ、カフェやレストランでは「Japanese?」と聞かれ、片言の日本語で対応してくれるなど、おもてなしの心を感じる瞬間が何度もありました。
なかには愛想の悪いスタッフもいましたが、単に仕事にやる気がないだけかもしれず、明らかに「日本人だから」という理由だけで不愉快な態度をとる人には出会っていません。
慶州へは釜山からの日帰りツアーを利用したので、ガイドさんに「今回の韓国旅行に不安はありましたか?」と聞かれました。「少し不安もありましたが、来てみると思った以上に普通で拍子抜けするほどです」と答えたら、ガイドさんは「みなさんそうおっしゃいます」と。
その返答からは、今の韓国を訪れる日本人が、今までと変わらず旅行を楽しめている様子がうかがえますね。
都市部の韓国人にとって日本人は特別な存在ではない
今回、日韓関係が悪化するなかで韓国を訪れて実感したことは、「都市部の韓国人にとって、日本人は特別な存在ではない」ということです。
田舎に行けば事情は異なるでしょうが、ソウルや釜山に住む韓国人は以前から日常的に大勢の日本人を見ていますし、「日本に行ったことがある」という人もたくさんいるはずです。
彼らにとって、「自分の生活圏に日本人がいる」ということは当たり前のことで、街で日本人を見かけたり、日本語を聞いたりしたからといって、いちいち反応しない人がほとんどです。
日本のテレビニュースを見ていると、「日本人というだけで吊し上げをくらうのでは」と思ってしまいかねませんが、ほとんどの韓国人にとって、日本人は良くも悪くもそれほど特別な存在ではなく、「日本語を話しただけで注目される」と考えるのは、ちょっと自意識過剰ではないでしょうか。
日韓関係が悪化しているとはいっても、韓国人の抗議の対象は、基本的には日本国民ではなく、日本政府(安倍政権)なので、都市部の韓国人が、いちいち日本人にの存在に注意を払わないことに変わりはないようです。
韓国人も自分の日常で忙しい
日本のニュースを見ていると、まるで韓国全土が「反日」の渦に包まれ、韓国人の生活が「反日」一色に染まっているような気すらしてしまいます。
しかし、現実はそうではありません。ちょっと考えたらわかることですが、韓国人だって自分の日常で忙しい。学校、仕事、家庭など、それぞれにやることがあって、「反日」ばかりに時間とエネルギーを注いでいられるわけはありませんよね。
日韓の対立が激化しても、大半の韓国人にとっては、今までとそう変わらない「日常」があるだけです。
日韓対立が長期化するなか冷静な動きも
半導体材料の輸出規制問題が盛んに報じられるようになって、はや1ヵ月以上。韓国における日本製品不買運動も拡大を見せ、7月末には不買運動の参加率が6割を超えたと報道されています。
その一方、韓国では「反日」と「反安倍」を区別しようという動きも浸透中。「韓国人が抗議の対象にしているのは、あくまで安倍政権の政策に対してであって、日本国家全体や日本国民ではないのだから、それを区別しよう」という考え方です。
8月上旬のソウルでは、「NO/BOYCOTT JAPAN」という垂れ幕1100本が設置されたものの、ソウル市民による批判が殺到し、すぐに撤去されるという出来事もありました。批判の内容としては、「韓国にやってきた日本人旅行者の心情に配慮すべき」といったもので、政治と個人を分けて考える韓国人が多いことを物語っています。
参考:『「NO日本」から「NO安倍政権」へ 韓国、民意に変化?』
メディアの報道ではわからないこと
実は、5年ほど前まで、私は決して韓国が好きではありませんでした。今も「好き」というほどの親近感はありませんが、以前はもっとネガティブなイメージがありました。
それはやはり、韓国が「何度謝っても補償しても、いつまでも過去のことを持ち出して日本を糾弾し続ける反日国」というイメージが強かったからですね。
そういった韓国政府の姿勢は今も変わっていませんが、世界各地を旅するなかで韓国の若者たちに出会い、彼らが思いのほか日本の文化(食文化やポップカルチャー)に親しみ、(歴史的なことは別として)今の日本をよく知っていることがわかり、私の心境にも変化が生まれたのです。
実際に、2018年に日本を訪れた韓国人は約750万人。それに対し、韓国を訪れた日本人は約295万人。韓国の人口は約5100万人と日本の半分以下ですから、「旅行」という点でみれば、「韓国人の片思い」といってもいい状況です。
さすがに2019年の訪日韓国人は昨年よりも減少するでしょうが、韓国の都市部では大量に日本食レストランがありますし、現地のスーパーや市場にも、大量の日本製品や日本ブランドの商品が出回っています。
韓国に行ってみればわかりますが、韓国における日本製品・日本ブランドの浸透度は、日本における韓国製品・韓国ブランドの浸透度の比ではありません。ローカルな市場にも日本メーカーの医薬品がたくさん並んでいるくらいですから、韓国で日本製品の不買を完璧に実行しようとすれば、かなり大変でしょう。
政治的には「反日本政府」の韓国人が多いとしても、そもそも「反日本人」「反日本文化」の韓国人は、日本人が思っているよりずっと少ないはずです。本当に日本や日本人が嫌いだったら、年間750万人もの人が日本に来るわけはありませんから。
今だからこそできる体験もある
多少の不安もありましたが、実際に今の韓国に行ってみると、以前と変わらず楽しむことができ、身の危険を感じることも、(ボイコットジャパンの張り紙を目にする以外は)不快な思いをすることもありませんでした。
また、こうした時期だからこそ普段考えないようなことに思いを馳せるきっかけになりましたし、今の状況下で韓国人がどう行動しているかを見るのは、とても興味深い経験でした。だから、個人的には今回の韓国旅行は有意義でしたし、行って良かったと思っています。
最近はウォン安傾向にあるので、現地での費用が抑えられたというおまけもありました。
どこに行くのも最終的には自己責任
私自身はこんな状況下でも韓国に行って良かったと思いますが、この記事を読んでくださっている方に、「今韓国に行くべき」とも「今韓国に行くのはやめるべき」とも言うつもりはありません。
それは、状況が変わる可能性もあり、結果に対して責任を持てないからというのもありますが、何にせよ自分の頭で考えて判断することが大切すべきだと思っているからです。
今の韓国に限らず、世界中どこへ行っても「絶対に安全」だと保証できる場所はありません。だからこそ、納得したうえで自分で決めることが大切だと思うのです。
実際に最近韓国旅行をした人の体験を踏まえて、「大丈夫だろう」と判断して韓国に行くのもひとつの選択ですし、「身の危険はなかったとしても、不安を抱えて行くのが嫌だから」と韓国旅行をとりやめるのもあり。自分で考えて、納得のいく選択をしてくださいね。