外国人ダーリンが日本での就活に成功した4つの「勝因」とは?

前回の記事『外国人ダーリン(大学院生)の日本での「就活」~内々定までの道のりを振り返る~』で、大学院生のドイツ人ダーリンの就活について、時系列でご紹介しました。

現在日本の大学院に通っているダーリンは、昨年5月に日本の資源会社から技術職で内々定をもらうことができました。

今回は、もう少し踏み込んで、なぜ外国人学生でありながら日本での就活に成功したのか、その「勝因」についてお話したいと思います。

ニッチな分野の専門知識があった

ダーリンの就活の勝因のひとつは、ニッチな分野の専門知識があったことです。

ダーリンが今大学院で学んでいるのは地学。私は地学のことはよくわかりませんが、ダーリンが今学んでいるのとまったく同じ専門分野を学べるのは、日本ではほかに北海道大学と秋田大学ぐらいしかないそうです。(もちろん「地学」のなかにも色んな分野があります)

かなりニッチですよね~。

ニッチなので、専門を直接活かすことができる就職先は資源業界などに限られるのですが、そういった企業はその分野の専門知識をもつ人材を求めています。

ダーリンの研究室にも、日本を代表する資源会社の方々がわざわざ説明会に来たり、インターンの勧誘に来たりしたそうです。ダーリンもそうやって接点を持った企業のインターンや見学会などに参加していましたが、福岡から東京までの交通費や宿泊費は企業負担!

「最終面接でもないのに企業が交通費や宿泊費を出してくれるなんて、文系だったら絶対ありえない!」と驚きました。企業が「欲しい」と思うような専門知識をもつ理系人材って、優遇されているんですね。

ニッチな分野だからこそ、その分野での専門知識をもつ学生の母数が少ないため、企業側も「なんとしても優秀な人材を獲得したい」と危機感を持っていて、争奪戦になるようです

だからダーリンは、「専門をダイレクトに活かせる就職先は限られるけれど、その限られた就職先のなかで自分が行きたい会社を選べる立場」にあったというわけです

完璧な日本語が求められない仕事だった

今回の就活の勝因のもうひとつは、完璧な仕事が求められない仕事であったということです。

ダーリンの日本語力は日常会話ができる程度には成長したものの、まだまだ知らない単語もありますし、ビジネスレベルの会話や文書作成ができるレベルではありません。

専門知識が重視される仕事でも、日本人並みの日本語力を求められてしまうと、アウト。日本語力に関してはとても日本人学生に太刀打ちできません

私は日本語力の点でダーリンの就活にはけっこう危機感を抱いていましたが、フタを開けてみると、結果的にはあまり問題になりませんでした。

なぜなら、ダーリンが就職したかった資源業界は、海外とのビジネスも多い業界であり、日本語が完璧でなくとも、それ以外の言語が話せることで十分カバーできたからです

むしろ、面接などの場で「日本語上手ですね」と褒められたことも何度かあったようで、はじめから日本語力にはあまり期待していない会社もあったくらいです。

日本語こそ日常会話レベルですが、資源会社にとっては、ドイツ語(ネイティブ)と英語(ネイティブに近いレベル)が話せるメリットのほうが大きいと映ったようです。

日本の大学院に通っている

 ドイツではなく、日本で大学院に通っていることも日本での就活を有利にした要因です

ダーリンがドイツの大学に通っているあいだ、私たちは以前2年半ほど一緒にドイツで暮らしたことがありますが、ドイツに住む前から「日本で就職して将来的には日本に住む」ことを目標にしていました。そのために、日本の大学院に通うことにしたのです。

ドイツの大学院に通っていたとしたら日本で就職できなかったのか、それはわかりません。

でも、日本で就活をする以上、日本にいたほうが情報も入ってきますし、地理的にも圧倒的に有利です。さらには、企業側も「○○大学大学院の学生が欲しい!」と日本の大学院に通っている学生を狙ってアプローチしてくるので、企業との接点も増えます

そういう意味で、日本の大学院を選んだことは日本での就活を圧倒的に有利にした要因でした。

 基本的な日本の習慣や文化を理解している

 今の日本企業(特に大企業)は「ダイバーシティ(多様性)」を謳って、「外国人の積極採用」を掲げているところも多いです。

しかしながら、「ダイバーシティ」を掲げていても、実は世間に対するパフォーマンス的な意味合いが強く、本気で「多様性を推進しよう」とは考えていない企業もあります。

そんな「表面的には多様性を推し出したいけれど、あまり冒険はしたくない」日本企業にとって、ダーリンはある意味格好の外国人人材でした

学歴が高く、礼儀正しく、基本的な日本の習慣や文化を理解しており、おまけに日本人と結婚しているので、外国人でありながら日本企業に溶け込める可能性が高いからです

日本の習慣や文化を理解していない外国人の場合、いくら優秀でも「日本で働いてみたくて就職したけど、やっぱり合わなかった~」とあっさり国に帰ってしまうリスクもあります。

「日本人と結婚している」など、日本社会と接点のある外国人、日本にある程度根を張っている外国人というのは、そういうリスクを避けたい企業にとってはおいしい人材でしょう。

おわりに

4つ目にはかなり私の解釈が入っていますが、以上がドイツ人ダーリンの就活の勝因でした。

日本で私たちが出会った頃、ダーリンは高校を卒業したばかりでした。そこからドイツの大学に通い、日本の大学院を受験して合格し…とここまでの道のりは長かったですが、「日本で大学院に通って日本で就職する」という私たちの青写真が見事実現した形です。

はるか遠いゴールに見えても、一歩一歩前に進んでいけば、大きな目標だって叶うんですね。それを叶えたダーリンを、心から誇りに思います。