以前「イギリス、フランス、ドイツは危険!?ヨーロッパでテロのリスクが高い国・低い国」という記事を書いたところ、このサイトのなかでも特に継続して読まれている記事のひとつになっています。
それだけ、日本人のあいだでヨーロッパにおけるテロのリスクが大きな不安要素となっているのだと実感しているところです。
ヨーロッパでテロのリスクが低く、治安の良い国はどこ?
個人的には、ヨーロッパで「テロのリスクが高い」とされているからといって、必ずしもその国を旅行することが危険だとは思いませんが、「わざわざテロのリスクが高いといわれる国に行くのはちょっと・・・」という気持はよくわかります。
現実問題としてテロに遭う可能性は低くても、テロの心配をすることで旅行が満喫できなくなってしまうようではもったいないですからね。
そこで、ヨーロッパにおいてテロのリスクが高い国として上位にランクインしていない国で、かつ全般的な治安が比較的良い国をご紹介したいと思います。テロのリスクが低くても、それ以外の犯罪に巻き込まれてしまっては元も子もありません。
以下の7ヵ国は、実際に私が訪れたときの感触をおもに、イギリスのエコノミスト紙が発表している「世界平和度指数ランキング」も考慮して選びました。
世界平和度指数は、その国における犯罪件数やテロのリスク、戦争に巻き込まれるリスク等、さまざまな要素から算出されており、単なる治安の良い国ランキングではありませんが、ひとつの参考にはなると思います。
スイス(2017年平和度指数ランキング9位)
世界屈指の治安の良さを誇る国として知られるスイスは、テロの面でもリスクの低い国です。
隣国のフランスやドイツが「テロリスクの高い国」に分類されていて、実際にここ数年何度もテロが起こっていることを考えれば、スイスは極めて統制が取れているといえるでしょう。EUに加盟せず独自路線を歩んでいることも関係しているのかもしれません。
公共バスでドイツからスイスに入国する際、本来はシェンゲン協定に基づいて入国審査はないはずが、近年の難民問題の影響もあってか、パスポートチェックを受けたことがあります。反対にスイスからドイツに公共バスで入国する際はノーチェックであったことを考えると、スイスは自国の安全にかなり神経質だという印象を受けます。
最大の都市であるチューリヒでさえも、のんびりした空気が流れるスイスの街は基本的に平和そのもので、貴重品の管理に気を付けるなど、日本でも当たり前に気を配るようなことを怠らない限り、特に心配はありません。実際には、現地の人々がバッグを無造作に置いている光景を見かけることもよくあるのですが、あまり油断するのはおすすめしません。
フィンランド(2017年平和度指数ランキング17位)
世界屈指の福祉国家・フィンランドも治安が良く、テロのリスクも比較的低い国に分類されます。「かもめ食堂」で有名になったヘルシンキは、首都でありながら豊かな自然が残る穏やかな街。
日本でもイメージされている通り治安が良く、身の危険にさらされるようなリスクはほとんどありませんが、都市部を中心に観光客を狙ったスリや置き引きが年々増えており、平和な空気に流されて気を緩めすぎないことが肝心です。
ポルトガル(2017年平和度指数ランキング3位)
「南欧は治安が悪い」と言われることが多いですが、意外にも治安が比較的良いのがポルトガルです。それに加え、現在のところテロのリスクも特別高まっていません。周辺諸国に比べイスラム圏出身の移民が少ないですし、スペインのように国内で分離独立を叫ぶ勢力があるわけではありません。
ユーラシア大陸の最西端に位置していて「行き止まり」になっていること、また幸か不幸か経済的・政治的に国際社会でそれほど注目されることがないことも、テロリストのターゲットになりにくい要素ではないでしょうか。
全般的な治安も比較的良く、私はポルトガルを一人で一週間ほど縦断しましたが、特に犯罪に巻き込まれるような不安を感じることもありませんでした。
ただし、リスボンやポルトなど坂の多い街では、夜遅くなるとひとけがなくなる狭い通りが多いので、念のためそうしたところに入り込まないよう気を付けたほうがいいでしょう。
クロアチア(2017年平和度指数ランキング31位)
世界遺産のドゥブロヴニクが有名になって、日本でも旅行先として人気が高まってきたクロアチア。それでも、フランスやスペインなど西ヨーロッパの大国に比べると、実際に「行ったことがある」という人が少なくイメージが湧きにくいので「治安は大丈夫なの?」と思われがちです。
実際には、観光地・リゾート地として高い人気を誇るだけあって、治安は良好。個人的には、今まで行ったヨーロッパの国のなかで最もリラックスして旅ができた国のひとつです。
テロの危険が少ない要因としては、クロアチア自体がそれほど豊かな国ではなく、過去に植民地支配を行ったことがあるわけでもないために、貧しい国からの移民やイスラム圏からの移民・難民が少ないことが挙げられるでしょう。
※「イスラム圏からの移民や難民が多いとテロのリスクが高まる」と言っているように聞こえるかもしれませんが、決してイスラム教徒全般が危険であるとは思いません。実際に私は何ヵ国かイスラム圏を旅したことがありますし、イスラム教徒の友人もおり、ほとんどのイスラム教徒は情に厚い善良な人々だと身をもって知っています。
しかし、フランスをはじめ西ヨーロッパ諸国では、その国で生まれ育ったイスラム圏出身の移民の子孫がテロを起こしたり、「自称難民」としてヨーロッパに入りこみ、テロやその他の犯罪に手を染めるイスラム教徒がいるのも事実です。
イスラム教徒に限らず文化や宗教、価値観が大きく異なる人が大勢入ってくると、ヨーロッパ社会に溶け込めず反社会分子となってしまう人が一定数出てきてしまうのです。
ポーランド(2017年平和度指数ランキング33位)
東ヨーロッパも貧しくて治安が悪いと思われがちですが、EU加盟もあって東ヨーロッパの治安は改善傾向にあります。その理由のひとつとして、イギリスやドイツなどより豊かな国に出稼ぎに行けるようになったことが挙げられます。今のところ、テロのリスクも大きく取り沙汰されていません。
私はポーランドを一人で一週間ほど旅しましたが、ポーランドの治安の良さには驚きました。ドイツの大都市を歩いていると、ときどき「あまり近づきたくないな」と思ってしまうような人に遭遇しますが、ポーランドではほとんどそういうことがなかったのです。
ワルシャワやクラクフのような観光地では、もはや「貧しい東ヨーロッパ」のイメージはなく、古い街並みを守りつつも近代的に発展を遂げている印象を受けました。
チェコ(2017年平和度指数ランキング6位)
やはりポーランドと状況は似ていますが、チェコも比較的安全でテロのリスクも低い国。世界遺産にも登録されている首都のプラハは一大観光地で、夏の観光シーズンともなれば朝から晩まで観光客であふれています。
それもあって、街を歩いていて暴力的な犯罪に巻き込まれるようなことはあまり考えられません。基本的にはスリや置き引きなどに注意すれば安心して旅行が楽しめるでしょう。
エストニア(2017年平和度指数ランキング36位)
「バルト三国」と呼ばれる、エストニア・ラトビア・リトアニアのうち、最も北、フィンランドのすぐ南に位置するのがエストニアです。
ここでは、その中でも特に平和な印象を受けたエストニアを代表して取り上げましたが、ラトビアとリトアニアの治安も決して悪くありません。私はバルト三国を2週間ほどかけて一人で旅しましたが、特に治安上の不安を感じるようなことはありませんでした。
ポルトガルや東ヨーロッパの国々同様、テロの危険も少ないので安心して旅行ができるヨーロッパの穴場の旅先のひとつといえるでしょう。
おすすめはクロアチアとポルトガル
今回ご紹介した7ヵ国のなかで、個人的なおすすめを挙げるとしたらクロアチアとポルトガルです。
まず、クロアチアは絶景の宝庫でアドリア海とオレンジ屋根の旧市街が織り成す素晴らしい風景が楽しめます。加えて、嬉しい驚きだったのが人がフレンドリーだったこと。それほどハイテンションではありませんが、特にアドリア海沿岸の街ではイタリア的な陽気さを感じました。(関連:「厳選!絶景の宝庫・クロアチア旅行で訪れるべき5つのスポット」)
ちょっと枯れた風情のある、ノスタルジックな風景が好きな方にはポルトガルもとてもおすすめです。ポルトガルの人々も人懐っこく親切で、旅していてとても居心地が良かったのが印象的です。他の旅人の話を聞いても、クロアチアとポルトガルの2ヵ国は、実際に旅した人の評価が高い国ですね。
あと1ヵ国付け加えるなら、ポーランドです。ポーランドはヨーロッパにしては物価が安いわりに、安全に快適に旅ができコストパフォーマン最強。陶器などの雑貨や中世の街並みが可愛いので、女性には特におすすめです。
こんにちは、はるぼぼ(@harubobo_nikki)です。先日ポーランドに行って、ワルシャワ、クラクフ、ヴロツワフの3都市をめぐってきました。ちなみに一番気に入ったのはヴロツワフ(トップ画像)。カラフルで可愛すぎる中世の広場に一目[…]
おわりに
ヨーロッパでテロのリスクが高いといわれるのは、これまで旅先としてメジャーだった西ヨーロッパの大国が中心です。これを機に、今までその魅力を知らなかった国に目を向けてみるのもいいかもしれません。
なお、今回ご紹介した国々は相対的に安全な国であって、「絶対に安全」というわけではありません。やはり、荷物の管理に気を付ける、夜遅くにむやみに出歩かないといった当たり前の注意は必要です。
また、治安情勢は今後変化する可能性もありますので、渡航にあたっては外務省の海外安全ホームページ等を参考にして、最新の情報を入手されることをおすすめします。