日本人が驚く、意外なドイツの文化と習慣12選

日本では「ドイツと日本はよく似ている」などと言われることが多いですよね。

確かに、モノづくり大国であることや、真面目な国民性など、日本とドイツには共通点があるように思えますが、実際にドイツで暮らしてみると、日本人にとっては驚くべき文化や習慣がたくさんあります。

知れば知るほど、「日本とドイツが似てるなんて誰が言い出したの?」と思ってしまう、日本人が驚くドイツの文化と習慣をご紹介しましょう。

温かい食事は一日一回

日本とドイツの文化や習慣を比較したときに、もっともギャップが大きいもののひとつが「食に関する」ことです。日本人にとって驚きに値するのが、ドイツでは「温かい食事は一日一回」という伝統があること。

朝はパンやシリアルなどの冷たい食事で済ませ、昼は肉料理などの温かい(調理された)食事をとり、夜はまたサンドイッチなどの冷たい食事で済ませるといった具合です。

現代では日本人も朝はパンとヨーグルトなどの冷たい食事をとる人も多いですが、日本では伝統的に「食事」といえば、調理された温かい料理を指すので、「冷たい食事」とう概念すらありませんよね。

しかし、ドイツでは「冷たい食事」というのは伝統的な食文化における重要な地位を占めています

もちろん、ライフスタイルや嗜好の多様化により、今もドイツ人全員が温かい食事は一日一回しかとらないというわけではありません。それでも、昼にボリュームたっぷりの外食をしたら、夜はサンドイッチなど簡単なもので済ませるというドイツ人はまだまだ多いです。

誕生日パーティーは本人が主催

日本人から見ると、ドイツの誕生日にまつわる習慣もなかなか変わっています。

日本では、誕生日を迎える人の家族や友人などがパーティーを企画することが多いですが、ドイツの誕生日パーティーは誕生日を迎える本人が企画します。

誕生日パーティーは自宅で行うこともあれば、レストランなどで行うこともありますが、いずれにせよパーティーの開催にかかる費用は、誕生日を迎える本人が全員分を負担するケースが多いです。誕生日を迎えた人は周りの人からおごってもらえることが多い日本とは正反対ですね。

また、誕生日パーティーを開催しなくても、誕生日を迎えた人はケーキを焼いて学校や職場に持って行って皆にふるまうという習慣もあります。そのため、ドイツのスーパーでは、大きなホールケーキを持ち運ぶためのプラスチックケースが売られているんですよ。

歩きタバコとポイ捨ては当たり前

ドイツに移住する前は、「ドイツ人はキレイ好きでマナーが良い」と思っていました。そのイメージが間違いだとは思いませんが、ことドイツの喫煙習慣に関してはネガティブな意味での驚きがありました。

ドイツでは、路上や鉄道駅のホーム、トラムの停留所など、およそ禁煙でない場所では必ずといっていいほどタバコを吸う人がいます。しかも、タバコを吸った後はポイ捨てが当たり前。日本でも歩きタバコやポイ捨てをするマナーの悪い人はいますが、ドイツにおける歩きタバコの多さ、ポイ捨ての多さは日本の比ではありません。

清掃される前の朝のバス停などには、タバコの吸い殻が大量に落ちていますし、旧市街の石畳にめり込んで取れなくなっている吸い殻もたくさん見かけます。

日本と違って、ドイツでは閉じた公共の空間(レストランの屋内)は原則すべて禁煙なので、屋外の喫煙が増えるという事情はあると思いますが、ポイ捨てはなんとかして欲しいです。

とにかくチョコレートの出番が多い

ドイツは知ってびっくりのチョコレート大国。ドイツで暮らす前は、「チョコレート」といえば、スイスやベルギーのイメージが強かったのですが、今ではドイツは世界一のチョコレート大国ではないかと思うようになりました。

というのも、ドイツはチョコレートの生産量が世界一。日本チョコレート・ココア協会の「世界主要国チョコレート生産・輸出入・消費量推移」を見ると、ドイツはダントツの世界一で、国内消費も圧倒的に多いですね。

ただし、別の統計で見ると一人当たりの年間チョコレート消費量は世界1位がルーマニア、次いで2位がドイツとなっています。いずれにせよ、ドイツが世界トップクラスのチョコレート大国であることは間違いありません。

それだけに、ドイツのスーパーやドラッグストアでのチョコレートの品揃えの充実度は半端ではありません。さほど大きなスーパーでなくても、まず一枚の写真には収まりきらないほどたくさんチョコレートが並んでいます。

ドイツ人は老若男女チョコ好きな人が多く、日常的に自分で食べるのはもちろんのこと、ちょっとしたプレゼントやお礼など、贈り物にもチョコレートを多用します。

庶民派から高級まで、あらゆるラインナップが揃うチョコレートはドイツ土産にもぴったり。ドイツで買えるおすすめのチョコレートは下記の記事で紹介しています。

日曜日に掃除機をかけてはいけない

ドイツでは、日曜日にはスーパーも含めほとんどのお店が休業します。日曜日を「書き入れ時」と考える日本の商習慣とは正反対ですね。

この「日曜休業」の習慣は、もともとキリスト教の安息日に由来しますが、現代では「労働者の権利保護」の意味合いも強くなっています。

それに関連して、ドイツでキリスト教色が薄れてきた今でも、「日曜日は静かに休む日」という意識は根強く、日曜日に騒音を出すと近隣の家からクレームが出ることも珍しくありません

そのため、ドイツでは日曜日に掃除機をかけるのは基本的にNG。ドイツ人全員がこれを気にするかというと必ずしもそうではありませんが、日曜日や祝日には不必要な騒音を出さないようにしたほうが無難なのは間違いありません。私自身、ドイツでは日祝に掃除機を使うことは避けるようにしています。

「お犬様」の権利が強い

なんでこんなに賢いの?」と、ドイツ在住日本人やドイツを旅行したことのある日本人が驚くドイツの犬たち。

ドイツでは、犬はペットショップで買うものではなく、ブリーダーから購入したり、動物保護収容施設から引き取ったりするのが一般的。ドイツの犬はきちんとしつけられているかわりに、権利も強いのです。

例えば、ドイツで鉄道を利用すると、当たり前のように犬が乗っていますし(もちろんケージなどに入れられているわけではなくそのままで)、愛犬を連れてカフェやレストランに入る人も多いです。

犬を連れてカフェやレストランを利用する人は、夏季ならテラス席に座る人も多いですが、ドイツのレストランで食事中、店内で「何か動いた」と思ったら犬だったということもあります。ドイツの犬はそれくらい静かな子が多いので、どこにいてもあまり邪魔になりません。

そんなわけで、ドイツではアパートの入居希望者に対して「犬はいいけど小さな子どもはダメ」という大家さんも珍しくないようです。理由は「犬はちゃんとしつければ大人しいけど、子どもはどうしても騒ぐから」。

ある意味、人間の子どもより、しつけられた犬のほうが一人前と思われているのかも・・・?

ドイツのスーパーやレストランには、犬用の水飲み場を設置しているお店もあります。ドイツは犬に優しい社会なんです。

病院の診察も握手から始まる

ドイツでは、あらゆる人間関係は握手から始まるといっても過言ではありません。

仕事上の付き合いのある人と会ったときはまず握手、パートナーの友人や親戚に会ったときもまずは握手、さらに病院の診察室に入り、診察を始めるときも医師と患者が握手を交わします

慣れていないとちょっと面食らいますが、ドイツのお医者さんは「私はドクターの○○です」と、まずきちんと目を見て自己紹介をしてくれるので、「パートナー」としての信頼感覚が持てますね。

ちなみに、ドイツでは初対面の相手とは握手を交わすことが多いですが、プライベートな関係で何度も会ったり、親しくなってきたりするとハグに変わります

私も、ダーリンの両親や親しい友人とはハグを交わす関係になっています。何度病院に行ったとしても、さすがにお医者さんとハグを交わすことはないでしょうが。

恋人を家族や親戚に気軽に紹介する

ドイツの恋愛文化は日本とはかなり異なります。最大の違いのひとつが、恋人を家族や親戚に気軽に紹介すること。

日本でも、彼氏彼女を気軽に親に紹介する若者が増えつつあるとは思いますが、まだまだ「家族に紹介=結婚か結婚前提」という考えは根強いですよね。でも、ドイツ人は結婚の予定の有無や付き合いの長さにかかわらず、気負いなく恋人を家族に紹介する人が多いです。

たとえば、ダーリンのおじいちゃんの80歳の誕生日パーティーに、ダーリンのいとこが付き合い始めたばかりの彼女を連れてきていたことがありました。日本ではちょっと考えにくい状況ですが、ドイツでは特別なことではないようで、周りもごく当たり前のように2人を受け入れていました。

日本では、「自分の息子や娘と結婚することが決まっている、あるいはその可能性が高そう」という段階になってはじめて、恋人が心から歓迎されることが多いように思いますが、ドイツでは2人が結婚しそうかどうかに関係なく、「今この瞬間付き合っている」というだけで無条件に認められる傾向にあります。

それだけ、ドイツでは「カップル」という対の関係の地位が高いということですね。

ドイツでは、ティーンエイジャーの若いカップルでも、彼氏彼女の実家に泊まるなど親公認で仲良くしている人が少なくありません。

温泉やサウナは裸で男女混浴が普通

ドイツは知る人ぞ知る温泉大国。国際的にも有名なバーデン・バーデンをはじめ、ドイツにはたくさんの温泉町があります。

日本の温泉とは趣が異なり、ドイツには温泉とサウナを組み合わせた保養施設が多いのですが、特筆すべきは裸で男女混浴が普通であること。

水着着用可のエリアがある温浴施設もありますが、そうでなければ裸で男女一緒と思っておいたほうがいいでしょう。「裸で男女混浴なんてとんでもない!」と思う方はご注意を。

こうしたドイツの「裸文化」は、ドイツ人の自然好きと関係しているように思います。

もちろん皆がそうというわけではありませんが、(本人が意識していなかったとしても)ドイツ人にとっての究極の理想は自然回帰。自然に囲まれて、自然と一体化することです。「裸=自然なのだから何も恥ずかしいことはない」というわけですね。

ケーキを買うと紙に包まれる

ドイツでケーキを買うと、ちょっと面倒なことになるかもしれません。日本でケーキを買うと、箱に入れてくれて持ち歩きもラクですよね。

でも、ドイツでケーキを買うと、紙皿のような薄い紙のトレイにケーキを載せて、紙でくるんで終了!さすがはドイツ。ケーキの包装も質実剛健です。

基本的に紙袋をくれることもありませんし、保冷剤が必要か聞かれたことも一度もありません

個人的には日本の過剰包装はどうかと思うことも多いですし、家で食べるだけならドイツのエコなラッピングはいいと思うのですが、ケーキを紙で包まれてしまうと袋に入れるわけにもいかない(安定しないので型崩れ必至)ので、手で持つしかなくなります。

そうすると、ドイツでケーキを買うと片手が完全にふさがってしまうので、ほかにも荷物があったり、後で買い物の予定があったりすると結構不便。ドイツでケーキを買うならほかの用事を済ませてから、が鉄則です(私のなかで)。

結婚指輪は右手薬指につける

日本人は「結婚指輪は左手薬指につけるもの」と思っていますが、ドイツでは一般に、結婚指輪は右手薬指にはめます。ドイツでは婚約指輪は左手、結婚指輪は右手なのです。

その背景として、聖書では右手は正義や権力を表すものとされており、右手に結婚指輪をはめることは「幸運の象徴」と考えられるようになったことがあるようです。

ドイツのほかにも、オーストリア、ロシア、ポーランド、ブルガリアなど東ヨーロッパ諸国を中心に、右手に結婚指輪をはめる習慣のある国があります。

ただし、これはあくまでも習慣であって、ドイツ人全員が結婚指輪を右手につけているわけではありません。「利き手に指輪をはめると邪魔になる」等の理由から、左手に結婚指輪をはめているドイツ人もいます。

ドイツの離婚は裁判必須

ドイツでの結婚は、ドイツ人同士の結婚であっても役所での婚姻式が必須と、紙一枚で婚姻が成立する日本よりも面倒な仕組みになっています。

離婚ともなればなおさらで、夫婦のあいだで合意が成立している円満離婚であっても紙一枚での離婚はできず、裁判が必須になります。

日本では、夫婦間の話し合いによる協議離婚(紙一枚の離婚)が離婚件数の9割近くを占めていますが、ドイツではそもそもその選択肢がないのですね。

さらに、一部の例外を除き、裁判に進むためには一年以上の「離婚を前提とした別居期間」が必要というわずらわしさ。ドイツでは、離婚のためにお金も時間もたっぷりかかります。

それもあって、ドイツでは結婚しないパートナーシップ(いわゆる「事実婚」)も一般的

婚外子も多く、事実婚カップルのあいだに子どもが生まれたとしても、両親が結婚していないことにより子どもが不利益を被ったり、差別を受けたりすることもありません。

この点も「非嫡出子(結婚していない男女のあいだに生まれた子ども)」というと「ワケアリ?愛人の子?」と思われがちな日本とは大きく違うところです。

おわりに

小さなことから大きなことまで、ジャンルを問わず日本とは異なるドイツのさまざまな文化や習慣をお話しました。

モノづくり大国であるという点や、比較的真面目で勤勉というところだけを見れば、似ているように思える日本とドイツですが、日本社会とドイツ社会には大きな違いがあり、日本人とドイツ人の感覚や価値観にも大きな違いがあるということが伝わったでしょうか。

ドイツに移住する前は、「日本とドイツは似てるっていうし、同じ先進国だから大して違わないだろう」と思っていたのですが、いざ住んでみると予想以上に多くの発見や驚きがありました。今後も、「不思議の国ドイツ」の姿を伝えていけたらと思います。