ドイツ人といえば「真面目で勤勉」というイメージを持っている人が多いと思います。
私も以前はそうでした。
でもドイツで暮らしてみて、しだいに「ドイツ人は実は労働嫌いなのではないか」と思うようになってきたのです。
サービスや能率の向上に努めないサービス産業
日常生活の中でよく目にするのは、スーパーや交通機関といったサービス産業。
日本のサービス産業で働いている人たちの多くは、それで自分の給料が上がるわけではなくても、一生懸命サービスや能率の向上に努めます。
でもドイツではそうではありません。
スーパーのレジといった時給の仕事は能率よくさばいたところで自分の給料が増えるわけでも、早く仕事が終わるわけでもないので、マイペースにゆっくりやります。
「お客様を待たせてはいけない」などという概念はありません。
さらに電車はしょっちゅう遅れるし、「技術大国ドイツ」のイメージとは程遠いほど、車両も、運営システムも前近代的です。
そもそもサービスへの考え方が大きく異なるという背景はありますが、ドイツの姿を見ていると、やはり日本人は「顧客利便性」や「顧客満足」を追求しながら、よりよいものやサービスを生み出すのが好きなのではないかという気がしてくるのです。
ホワイトカラーの能率がいいのは早く仕事を終わらせたいからでは?
ドイツのホワイトカラー、時給ベースではなく、成果ベースで高付加価値の仕事をしている人たちは「能率が高い」と言われます。これは決して嘘ではありません。
2014年度のOECDのデータによれば、労働時間だけ見るとドイツは主要国の中で「もっとも働かない国」です。
ドイツ人の年間労働時間は1371時間で主要国で最短。ちなみに日本は年間1729時間です。
それでもドイツの一人あたりGDPは日本よりも高いので、ドイツ人は少ない労働時間で大きな成果を挙げているといえます。
ダーリンのご両親も遅くても18時ぐらいには帰宅して、19時ぐらいからはワインを片手にテレビを観たり、完全にリラックスタイムです。
ドイツ人が長時間労働にならないのは、法律で長時間労働が禁止されているうえにそのルールが厳密に運用されているという背景があります。
サービス残業が「会社への忠誠心」とみなされることも多い日本と違って、時間内に仕事を終わらせられない人は無能と思われる風潮の影響もあるでしょう。
でももっと単純にいうと、「就業時間になったら一刻も早く帰りたい」から能率よく働くのではないかと思うのです。
なぜかというと、ドイツ人がもっとも大切にするのはプライベートでリラックスする時間。
休暇で南のビーチに出かけたり、週末に散歩したり、平日の夜ワインを飲みながらテレビを観たりする時間は絶対に侵されてはならない聖域なのです。
「働くことは自分が生まれたときから背負っている罪の贖罪である」というキリスト教の労働観が奥深いところで作用しているのでしょうか。
やっぱり働き者の日本人
私には、日本人はドイツ人よりも働くこと自体が好きなようにに見えます。
ドイツ人もおそらく世界的に見ればかなり勤勉なほうなのだと思いますが、日本人の勤勉さはもっと奥深いところに刻み込まれている感じがするのです。
農耕民族で来る日も来る日も地道に働いてきた名残なのかもしれません。
最近では、ドイツ人があまり料理をしないのは、食にこだわらないからというだけではなく、「料理」を「労働」とみなすような感覚があって、それを避けたいからなのではないかと思いはじめました。
日本人はやっぱり生来働き者の民族なんだなぁとつくづく思います。
ただ日本では自分の意に反して長時間労働を強いられている人が多いのも事実。
ドイツの労働環境は日本に比べるとはるかに人間的です。
労働環境の改善は、日本が真に「豊かな国」になるための必須条件だと感じる今日このごろです。